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里山の風景とことばの柔らかさは、きっと関係あるに違いない。
 

親しむ   試す   やわらぐ  
2021.8.13

ここ母塚山は、国生みの女神である、イザナミのお墓があったといわれている。
南部町役場を訪ねる前に、少し寄り道をして、展望台のある山頂に、車で登ってきた。
晴れた日には、中国山地の山々だけでなく、日本海や中海まで、ぐるっと、しかもくっきり見渡せるらしいが、今日は天気が良いものの、ちょっとかすんでいるので、全体的にうっすら、ぼんやりとした景色が広がっている。

心なしか、空気が優しく感じられる。

役場の会議室に着き、役場の職員の方々と、町民さんを交えたワークショップに、オブザーバーとして参加した。

このワークショップは、春から始まり、今日でかれこれ、3~4回目になる。
大きな目標としては、「誰もが居場所と役割をもつコミュニティづくり」で、それを実現するための取組や事業を、毎回、違った切り口で、話し合いをすることになっている。
今日のキーワードは、「活躍」だ。 町民が、「活躍」できるようになるためには、どうしたらいいのかとか、「活躍」の定義を広げて、全世代にわたる町民が「活躍」するとは、どういうことなのか、などについて、ざっくばらんに、やりとりが行われた。

出てきた意見は、たくさんあったが、一部を紹介すると、こんな感じだ。
「高齢者と子ども、お互いが見守り合える仕組みをつくろう」「全世代が楽しめ、全員が体験できる事業をつくりたい」「ワンコインで利用できる“ボランティアお助け隊”がいいのでは」「誰でもチャレンジできる制度を検討しよう」「オンラインを活用したキャンプスクールができるとよい」

いつもと同じで、教育委員会の若手職員さん、保健師さん、まちづくり法人、スポーツ活動をしているNPO、地域振興協議会の会長さんなど、世代も立場も全然違う人たちが、積極的に意見を言うし、議論が深まり、広がっていく。
また、新しい視点が加わったり、他の事例にも耳を傾けたり、何より、お互いのことを否定したりせず、尊重しながら、意見が積み上がっていく様子を見ているのは、とても気持ちが良いし、楽しくもある。

仕事柄、こんな風な、まちづくり関連のワークショップや、行政内部のワーキングチームに参加する機会はよくあるのだけれど、参加同士がお互いを尊重し合いながら、最後になんとなく、合意が形成されることなんて、あまりない。

そういった面で、正直、いつも感心、いや、感動してしまう。

なぜうまくいくのか、不思議に思い、少し観察してみることにした。
結構違った意見も出ているし、必ずしも、前に言った意見に同調している訳でもない。
お互いが、お互いの意見を聞いて、また、自分の意見を言ったりしている。
高齢の人が、若い人の意見を、うれしそうに聞いている。
言葉のトーンが、みんな、やさしく、穏やかに聞こえる。

結局のところ、理由はわからず、相も変わらず、もやもやは、残ってしまった。

でも1つだけ感じたことがある。

南部町の人たちは、方言だと思うけど、会話の最後のイントネーションが独特で、聞いている方には、「やさしい」「おだやか」な印象を与えていると思う。

地元の人同士だったら、普通なのかもしれないし、気にもしていないのかもしれないけど、
普段の会話程度なら、少しくらい厳しめの内容だったり、強く主張したりしても、キツいとか、怖いという印象は、たぶん、与えにくいと思う。

日頃の会話の中に秘められている、無意識のやわらかさみたいなものが、少なからず、このワークショップのまとまりと、居心地の良さや、楽しさにつながっているに違いない。

自分で勝手に仮説をつくり、勝手に納得することにしよう。
そう思って、イントネーションを真似て、心の中でつぶやいてみた。

「なぁんぶうっちょう」
発音で強調するところは、「ぶ」のところだ。

この調子で、これからも、南部町でがんばろう。

活まち大学まちづくり学部 講師S