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修験道の聖山・求菩提山の歴史が息づくまち、豊前市のこと
 

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2021.12.15

普段の他愛もない会話の中、たまに出てくる、こんな質問。
「あなたは海と山、どっち派?」
さて、あなたはどちら派だろう?

福岡県の東に位置し、大分県境にも近い豊前市。市の北部は瀬戸内海西域である周防灘(すおうなだ)に面し、また南部は、九州修験道の聖山とされる、求菩提山(くぼてさん)や犬ヶ岳といった山々に囲まれる、まさに、海にも山にも恵まれた、自然豊かなる地。つまり、海派、山派どちらも気になるスポットが多いまちなのだ。

個人的には海派の私。そんな私が、豊前市を知っていく中、最初に気になったのが「求菩提山」という山だった。自分でも意外だったが、まずその山の名前に惹かれた。恥ずかしながらも無知な私は、「くぼてさん」と読めず、完全なる敗北感を覚えた。しかし、次に
(菩提を求める、という名前、何か特別な場所のだろうな)と察することができた。そして、実際にその予想通りだと知れると、素直に感動を覚える。

求菩提山。まさに、山岳信仰に端を発する修験道の修行の場として有名な山で、2001年には国の史跡に指定されている。豊前市のみならず、日本にとっても印すべき場所といえる山なのである。

求菩提山の参道

求菩提山のことがどうしても気になった私、恒遠俊輔氏の「天狗たちの森」、そして「修験道文化考」という二冊の本で、求菩提山と修験道のことを知ろうとした。求菩提山の麓にある、求菩提資料館の館長も務めた恒遠氏による深い考察と文章に魅せられて、普段は触れない民俗信仰、民俗文化に浸かってゆく。

日本の歴史をグンと遡って、縄文時代から稲作農耕社会への移行、そこから生まれる、日本の民族宗教、農耕儀礼の発生について、順を追って説かれている。そして農耕儀礼から生まれた、「祭」。
さらに「祭」から出てきたのが、かつては「神遊び」と呼ばれた、神事芸能である「神楽」だ。豊前国では、古くから多くの里神楽が伝承されてきたという。そして、それは現在の、豊前市にもしっかりと継承されている。

そう。忘れてはならないのだが、豊前市は「神楽のまち」と呼ばれるくらい、まちの中に神楽が根づいている。
この神楽は、「豊前神楽」として、国の重要無形民俗文化財に指定され(豊前市の岩戸神楽は、1999年福岡県無形民俗文化財に指定)、今でも、六つの保存団体がその文化を継承し、秋を中心に豊前市各地の神社にて奉納が行われている。

豊前神楽の特徴とされるのが、鬼役の「駈仙(みさき)」が登場する演目が多いこと。
その「駈仙(みさき)鬼(おに)」が神社境内につくられた斎庭(ゆにわ)に立つ、十メートル余の高さの竹柱、斎鉾(ゆぼこ)を一気に登る、「湯立(ゆだて・ゆたて)神楽」は、とても華やかな演目だ。ネット上で見ることができる動画からも、そのアクロバティックな展開には画面越しでもドキドキさせられる迫力である。
このほか、釜で炊いた湯による祓い、火渡りなど、その内容は、豊前の地で育ってきた「修験道」に共通するものが多い。前述した、恒遠氏によると、「湯立神楽は、きわめて呪術性の強い神楽であり、その根底には「陰陽五行思想」が流れている」そうだ。豪快な舞、所作には多くの意味と祈りが込められているということか。

聖山、求菩提山のふもとで暮らす人々の生活に様々な影響を及ぼし、共存していた修験道。それが、現在も神楽の祈りの中に息づき、今も変わらず人々の暮らしを見守っているのだろう。
毎年秋、9月から12月にかけて、豊前各地で行われている「豊前神楽」。いつの日か、この目で鑑賞し、現代に続く祈りを感じてみたい。

湯立神楽

活まち書店・店員M

【出典:豊前市観光協会HP http://www.buzen-kk.jp/calture_kagura.html