ロード中...
トップ画像

「アグレッシブ」に攻め続ける。南さいはく地域振興協議会。
 

挑む   つくる   動かす  
2021.9.15

鳥取県南部町の一番南、山あいにある、南さいはく地域の人口は、約670人。
ここの地域の人たちが、今年度、一般社団法人を立ち上げた。
「一般社団法人を立ち上げる」っていう話を聞いたのは、1年ほど前のこと。

今になって考えると、大変失礼なことだが、最初に聞いたときには、正直。
「何で。」という言葉しか、頭に浮かんでこないくらい、全然腑に落ちないことだった。

その後、南さいはく地域振興協議会の活動の全貌が見え始めると、なかなか、まあ、たいしたもんで、いちいち驚いたり、感心したりするばかりだ。

例えば、活動組織。
会長、副会長の役員と、監査会、顧問、さらには、集落の区長15名で構成される評議会が執行部。加えて、総務部16名、公民館部12名、地域づくり部16名、ふれあい部27名、特産化研究会部11名の活動部。それと、専任の事務局がある。
人口が少ないのに、組織がとても体系的であり、それぞれに役割を持って、活動していることが想像できる。

あと、圧巻なのが、活動内容だ。
独居高齢世帯の見守り、敬老会や交流会、いきいきサロン、昼食会、男性の料理教室、健康診断の送迎、青色防犯パトロール、防災訓練、危険箇所の点検、消防訓練、認知症SOSネットワーク訓練などの、健康づくりや、安全安心な暮らしを守る活動。
これらは、きめ細やかで、回数も頻繁で、感心させられる。

運動会、グランドゴルフ大会、田植え・稲刈り交流会、釣り大会、しめなわ教室、いも植え・いも掘り交流会、炭づくり・スキー・きのこづくり教室、七夕まつり、ふれあい祭りなど、地域の人同士が交流する機会が、とてもたくさんある。

同時に、皆んなで、森林公園や町道の除草をしたり、草刈りや桜の木の管理をしたり、花の苗を配布したり、地域の環境や自然を守る活動も、積極的に行っている。

全国の田舎を回っていると、「高齢化が進み、地域活動をする後継者がいない」「町内会や地区の活動自体ができなくなってしまった」「祭りの担い手がいないので、存続ができない」といった声を、聞くことがとても多いのだけれど、ここの地域は、高齢化率が49%もあるのに、その高齢者の人たちが元気で、明るく踏ん張っている様子が見て取れる。

さて、ここからが、私の冒頭の疑問、「何で法人を設立しようと思ったのか」ということについて、だんだん、その理由がわかってきた、という話。

ここ、南さいはく地域振興協議会では、地域の豊かな自然を活かして、様々な特産品を、自ら作り出している。
米や野菜はもちろんのこと、木炭、えごま油、ゆず煮、かりかり梅、うど・うめ・ゆずの羊羹など、これらを作る活動の中に楽しさを取り入れて、仲間を広げることと、少しの収入を得ることを目的に掲げ、地域の人たちが元気に頑張っていると聞いている。

会長さんや、副会長さん、事務局が中心となり、独自のホームページを立ち上げたり、定期的に広報のためのチラシを作ったりして、自分たちの活動の様子を、積極的に発信している。

「県外の人に、自分たちのことを知ってほしいし、活動に関わってほしい」、「都市部の人たちのニーズを把握したい」、「関係人口を拡大して、加工品の販売や、イベント参加者の増加につなげたい」。

以前、会長さんから渡された資料は、文字や図や表、写真でびっしり埋まっていた。
内容を詳しく見てみると、今後の南さいはく地域の、活動や取組の方向性と、年度別の事業計画が記載されている。
表題は、「新地域づくり計画表」。
手に取ると、必死さと熱さが、ひしひしと伝わってきた。

そんな出来事があったので、自分としても、少しでもお役に立つことができれば、うれしいことだと考えて、南さいはく地域の皆さんのところに、東京の企業の方々を、お連れする調整をさせていただいた。

来訪された当日は、地域の現場を見たり、また、意見交換する機会も、十分取ることができたので、良かったと思っている。
何より、地域の皆さん方も、楽しそうだったし、それを、そばで見ていた自分としても、発見や気づきを、たくさんいただいた。

南さいはく地域振興協議会の視察の様子
現場視察の様子

そして一般社団法人は、めでたく4月に立ち上がり、先日は、オンラインでの意見交換の場を持つことができたので、最近の様子を伺ってみた。

「初年度、何とか黒字になりそうだ」、「都市部の企業の人の力を借りて、さらに新しい特産品を開発したい」、「都会に出かけて行って、情報収集や関係人口づくりをもっとやりたい」

そう語る、井上会長さんの顔は、画面越しだが、以前にも増して、明るく元気一杯だ。
今年度の末には、老朽化して使いにくかった地域振興協議会の拠点が、新しく建て替わり、そこには活動や、交流スペースだけでなく、加工品を作るための、小さな作業場も併設される。

全国いろんな地域で、特産物づくりが行われているが、この場所では、今後たぶん、外の企業の人の力を借りて、マーケットとなる都会の人たちが「欲しい物」や「買いたいこと」が生まれていくのだろう。

その活動のプロセスを、発信することができたら、今よりもっと、会長さんの顔が明るくなっていくんだろうな。

そんなことを思いながら、羊羹の新製品のネタを、勝手に考えたりしている。

活まち役場 まちづくり係K