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心も身体も思わず動く、
豊前市の新たな名所「大きな椅子」

やわらぐ   たのしむ   すごす  
2022.2.27

豊前市内の視察の途中、同行してくださっている職員さんから、「じゃあ、次は『大きな椅子』に行きましょう」とのご案内がありました。
大きな椅子・・?

車内の誰もが不思議そうな顔をしていると、職員さんが説明してくれました。
「4~5年くらい前ですかね、市内のNPO法人さんが作られたんですよ。」
どれくらい大きいんですか?
「そうですね、6メートルくらいの高さがありますよ。」
それって椅子としては使えないのでは・・一体、何のために?

思わず疑問を口にしたところ、職員さんは朗らかに笑って、「なんでですかね~。インスタ映えするスポットとして、最近、人気なんですよ!」と、写真を見せてくれました。

豊前市の「大きな椅子」

こ、これは・・!
確かに、写真、撮りたくなります。

早速スマホを取り出して、「豊前市 大きな椅子」で検索。
たくさんの記事が並んでいます。
上から順に読んでいくと、色々な季節や時間帯の、素敵な写真や笑顔の写真が載っていて、実際に行ってみた感想やおすすめコメントが添えられています。どれも好評価で、気持ちのこもった文章ばかりです。

「前から行きたかったけど、やっと行けた。」
「話題になってるので気になってた。」
「さすがインスタ映えスポット。多くの人が来ていました。」
メディアやSNSで取り上げられ、口コミが広がって、有名スポットになっている様子も伝わってきました。

新聞記事*もあり、それによると、2017年3月に、就労支援施設「森の学校」の理事長さん達が、「見た人の心が和むものを作ってみよう」と制作したそうです。
高さ約6m、幅約3mとのこと。

他にも読み進めていくと、あまり分かりやすい場所ではないけれど、大きな看板などは設置されていないようで、初めて行く人向けの道案内などが書かれている記事もありました。
たくさん集客しよう!といった商売っ気はなさそうです。

「観光名所」「有名スポット」というと、自然景観や街並み、城・社寺やテーマパークなど、既に評価が確立していたり、人を集めるために作られた場所が一般的ですが、「大きな椅子」は、皆を明るい気持ちにさせたいと思う人が、作りたいから作ってみたら、多くの人の心に響いて、宣伝もしていないのに広がっちゃった、という珍しい事例のように思われます。
大勢の人が写真を撮りに訪れているのも、インスタ映えを狙った結果ではなく、ただ面白がって作ったら、楽しい写真が撮れるから、人が集まって来ている・・。

などと思考を巡らせている内に、現地に到着。車を駐めて、丘を上っていくと、木で造られた大きな椅子が見えてきました。
木材が組み合わされ、手造りのぬくもりが感じられる椅子です。
でも、予想以上に大きく、近づけば近づくほど、そのあまりの大きさに、思わず笑い出してしまいました。

椅子の下まで来て、よく見ると、背柱と後脚は一本の柱のような木材で、大きな釘が何本も打ち込まれています。
これを使えば、椅子の座面に登れるんだ!
そう思った瞬間、身体が動いて、右手で釘をつかみ、左足を掛けていました。
後は、子どもの頃みたいに夢中で登って、座面に着くことができました。

 

豊前市の「大きな椅子」からの景色

大きな椅子の上からみた風景は、伸びやかで美しく、山々が見渡せます。
求菩提山、犬ヶ岳、経読岳。豊前市を象徴する山だと教えてもらいました。

調査や研究をしていると、何を見てもつい、目的とか要因とか、考えてしまいますが、「大きな椅子」には、そんな頭でっかちを吹き飛ばす、おおらかなパワーがありました。
そのゆったりと穏やかな明るさは、豊前市の土地や人にも感じる魅力です。

実は、「大きな椅子」を作った森の学校さんが「大きな机」も作った、という情報もあり、研究に煮詰まったら、今度は、「大きな机」に、頭を自由にしてもらいに来ようと思います。

 

活まち大学院
院生C

*出典:朝日新聞デジタル2017年9月14日「山すそに突如現れた巨大いす 高さ6m、SNSで話題」https://www.asahi.com/articles/ASK967JZJK96TQIP013.html