「ぶぜんサイクリングマップ(BUZEN CYCLING MAP)」という、豊前市観光協会発行のサイクリングマップがある。
このマップの影響だろうか、豊前市のことを知るうち、(いつか豊前市を訪れたい)と思うと同時に、(いつか自転車で豊前の里山を走ってみたい)という、かなり具体的な夢を温めていた。
そんなことを思っていたら、これらの夢を叶える機会がわりと早く訪れた。今年の秋分の頃、私用で福岡県を訪れることになった私は、そのチャンスを逃さなかった。同じ福岡県にある豊前市を訪れずに帰るわけにはいかないではないか!と、ひとりで勝手に盛り上がってしまい、豊前行きを決意した。
余談なのだが、私の中に、「豊前市を訪れたらやってみたいことリスト」、なるものがあって、豊前の里山サイクリングと並んで、やりたいことリストの筆頭に「求菩提山を訪れること」もあったのだが、こちらは少し時間的に難しく今回は断念。今秋の豊前訪問は「里山サイクリング」に集中することに決めた。
そして、今回のサイクリングで大変お世話になったのが、豊前市観光協会と、そのスタッフの皆様の存在であった。観光協会では、自転車の貸出も行っていて、事前にレンタサイクルの予約連絡をした時から、スタッフの方はとても親切に対応してくださって、豊前市を訪れる前から旅の期待は膨らんでいた。
豊前観光の拠点は、JR宇島(うのしま)駅。豊前市観光協会はその宇島駅に隣接していてとても便利。豊前を訪れた日はまさに快晴で、(一日サイクリングをしたら日焼けしそうだな・・・)と心配してしまうくらい、本当に良いお天気であった。
観光協会に到着したら、スタッフの方に笑顔で迎えていただいた。レンタサイクルを予約した旨を伝え、貸出しされたのはとても可愛いグリーン色のスポーツタイプのシティバイク。私に乗りこなせるか少々の不安は覚えたが、何事もチャレンジ精神。やってみよう、いや、やるしかない・・・!
スタッフの方から丁寧な説明をしていただき、おすすめのルートを頭に入れて、いざ出発。
こぎ始めた最初、ギアの切り替えに手間取り、少し走りにくさを感じたグリーンの自転車も、豊前市役所を通過したあたりからコツがつかめ、気持ちいいくらいにスイスイと道を進んでゆく。また、そのあたりからは大きな車道を離れ、農道を走るコースになるため、周りの景色を楽しむ余裕も生まれてきた。
豊前のまちは走りやすい。里山サイクリングは主に農道を走るのだが、農道といっても、きれいに整備された道は、余計なストレスもなくて、まちの様子を肌で感じられる。まちの音、匂い、光の加減などなど…自転車で進むスピードがちょうどいいくらい。
また、万が一向かう方向に迷ったら、遠くに見える山々を目印にすれば、今自分がどこを向いているかが分かる。私は求菩提山(と思っていた)をいつも目印にして走った。といっても、その山が本当に「求菩提山」だったかは、実は、不明である。しかし初めて豊前の山々を見たとき、(あれ?あれが求菩提山だろうか?!)と思った山がひとつあったので、それ以降は私の中で勝手に「マイ求菩提山」と名付け、サイクリング中はずっと目印にしていた。
豊前の地を訪れる前から、ひとり勝手に、求菩提山に親しみを覚えていた私は、求菩提山とおぼしき山を見つけた瞬間、豊前の土地に歓迎された気がして、静かに感動した。はっきり言って「ひとりよがりな妄想」なのだが、こうやって好きに旅の喜びを増やすのも、旅の醍醐味かなとか思っていたりする。
おすすめのスポット、旭城跡、夕田池、千手観音を経て、嘯吹(うそぶき)八幡神社に到着したころには、約2時間が経過。
神社のあたりはとても静かで、近くの保育園から子どもたちの声がうっすらと聞こえてくるくらい。穏やかな暮らしの中に、旅人の自分も溶け込むような感触をもっと感じたくて、まちの音に耳を澄ます。時折吹き抜ける風の音も、いつもよりもハッキリと聞こえてくる。稲刈り後の田んぼの匂いも届き、不思議な幸福感に包まれていく。ゆったりとした気持ちで、神社に参拝させていただく。静かで、穏やかで、そして心地よい。
あとで知ったのだが、こちらの神社のおみくじ、桜の花びらの形をしているそう。知っていたらおみくじ引きたかった。残念。また次回!
上の画像は、嘯吹八幡神社から続くまっすぐの農道。そして、この農道で出会えた、田の神様。彼岸花と一緒に微笑む姿を見つけたときは、思わず心の中でガッツポーズ!いつもこうやって、道行く人や旅人たちに笑顔を向けてくれているのだろう。ありがたいな。
そうして、ついにコースも折り返しに入る。これまで緩やかに傾斜を上ってきた形なので、帰りは一気に駆け下りるようなコース。まさに風を切るようにして坂を下ってゆく。耳に届く風の音が痛いくらい。
そこから国道10号線に出たら、ガラリと見える景色が変わった。変な表現だが、自転車に乗る私が一気に小さくなって、自分が世界の中心じゃなくなった感じ、とでもいえばいいのか。でもそれが嫌な感じでもなんでもなくて、いる場所、というか世界がまるごと切り替わった感覚なのだ。
豊前って、様々な景色を見せてくれるまちだ。海があって、山があって、美しい里山。パンフレットだけでは触れることのできない、しっかりとした実感が残る。
自転車で刻んだ、4時間余りのよろよろ旅。身体は疲労感いっぱいだったが、心は満足感いっぱいで、本当に楽しかった!でも次はぜひとも、「うみてらす豊前(https://umiterrace-buzen.com/)」2階の漁師食堂「うのしま豊築丸」で豊前自慢の海鮮料理を味わいたい!・・・・なんて、旅から帰ったばかりなのについ、次の旅のことを考えてしまっている。
本当に、これだから、旅ってやめられない。
活まち出身の旅人W