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四季をたずねて歩く豊前の里山〈新緑とアジサイの初夏〉
 

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2023.6.9

海と山の双方を臨む豊前市は、宇島漁港に隣接し、海の幸が満喫できる「うみてらす豊前」や、森林セラピー体験ができる「求菩提山」など、立ち寄ってみたいのどかな名所揃い。その中でも今回は、もう一つの豊前の楽しみ方、四季折々の風景を探す里山ドライブとウォーキングの魅力をご紹介します。

里山への誘い

「これこれ、これなんだよなぁ……」
何度か豊前を訪ねる中で、そんな言葉にならない言葉(?)がもれてしまったのは、市街地から車でゆっくり走って15分程の山間の道に入ったときのこと。田畑のほかには、ぽつりぽつりと民家が点在し、いよいよ上り坂に差し掛かると、眼下には太陽の光を反射して、きらきらと流れる川が。自然と、カントリーロードのメロディーが思い出され、清々しい気持ちが呼び起こされます。これがまさに、原風景というものなのかもしれません。豊前には、そんなそれぞれの懐かしい風景を求めて、のんびり里歩きをする楽しみがあります。

豊前市岩屋を彩る初夏のアジサイ。

 

四季の往来を感じながら岩屋を歩く

春先から夏にかけて、里山歩きや川遊びに、ぜひ足を運んでもらいたい場所の一つが、豊前市のちょうど真ん中に位置する岩屋地区です。市街地から向かって、地区の入り口にあたる場所には、岩屋活性化センター(公民館)があり、3月のひな祭りの時期には、およそ1100体のひな人形が飾られます。

壁一面、天井まで積み上げられたひな人形は圧巻の華やかさ。元々は、不用となったひな人形が集められたものだといいますが、住民や旅人たちと季節を祝う、第二の晴れの舞台を得て、人形たちも心なしか明るい表情に映るから不思議です。

上巳の節句を過ぎても、しばらくは飾られていますので、新緑の山々に白く点在する山桜を眺めながら周辺を散策し、この時期には、ぜひ立ち寄りたいところです。

岩屋活性化センターに飾られたひな人形は、見どころのひとつ。3月には、ぜひ足を運びたい。

さて、この頃から梅雨時期に向けて、岩屋では地区を挙げて、アジサイの手入れが忙しくなります。枝川内アジサイランドと名付けられた一帯を中心に、農道周辺や斜面に植えられたアジサイは16000株を超え、開花の時期には、住民の手による「あじさい祭」が行われます(今年2023年は6月4日(日)〜6月25日(日)で開催中!)。写真や口コミで、少しずつファンを増やしているこのお祭りは、3月の植栽に始まり、5月の草刈り、6月上旬に行われる手入れや農道管理など、住民の手による地道な活動に支えられています。

植栽や草刈は、体力の必要な作業。斜面の草刈りなどは危険な場合も。楽しみに待つ人のために、毎年住民一丸となって作業を進めている。

平均年齢が70歳を超える、地域の住民が主体となるこの活動は、想像以上に重労働。近年は、県内以外からボランティアの参加も得て、何とか取り組みを継続しています。枝川内あじさい祭り実行委員会事務局の奥本隆己さんは「この取り組みを通じて、地域の応援団ができたらいいなと思っています」と話し、ボランティアに訪れた人びとの、つながりの維持を大切にしているといいます。

あじさい祭りの頃。地域の農作物の販売や、秋に収穫するお米の予約も受け付けている。餅などがふるまわれる日も。人手不足も相まって、以前のように杵つきは行えないが、訪れる人が楽しめるように、継続の努力がなされている。地域の人たちと交流し、集落に溶け込みたい。

 

アジサイをめぐる一連の取り組みは、7月の第1日曜日に実施する剪定会で、一区切りを迎えます。剪定したアジサイは、挿し木にすることで家庭でも栽培できるため、希望者には挿し木指導も実施しているとか。「岩屋のアジサイを、ぜひ増やしてほしいですね」と、明るく語る奥本さん。訪れる人びとを、地域一丸となって懐深く迎え入れてくれます。

新緑の春から、あじさい祭りを経て夏は川遊びと、これからの季節は、特に楽しみが多い時期になっていきます。

また岩屋では、人々の往来が途絶えた夕方に、のんびりと里山歩きをする人の姿を見かけることもあるのだとか。明るい賑わいの時間を楽しみ、夕暮れの里時間に心を落ち着かせる。そんな贅沢な旅に想いを馳せます。

お引越しした大きな椅子、もってこいのその場所とは

里山歩きを楽しみながら、フォトジェニックな場所を目指すならばここ。豊前市でもお馴染みとなったオブジェ「大きな椅子」ですが、実は、以前設置されていた下河内から、今年に入ってお引越し。老朽化の進んでいた大きな椅子を解体、再度制作し、新たな設置場所となったのが、上川底の高台に位置する旧上川底小学校跡。

もみじ学舎。飛行機雲の走る真っ青な空と、新緑をバックに、まさに絵になる風景が広がっています。

こちらは現在「もみじ学舎」と名前をあらため、旧校舎を利用した、クラフトショップ、カフェなどが展開されている場所です。その校庭にあたる広場に、「大きな机」とともに設置されています。机と椅子、まさに学び舎と相性抜群!

大きな椅子と机は本当に大きい(笑)かけられた梯子をおそるおそる上り、大人も大はしゃぎ。足元にはお気をつけください!

もみじ学舎の周辺は、お弁当を持って、ゆっくり里山歩きするにもおすすめできる場所。山並みを見渡し、川を見下ろすロケーションは壮観です。疲れたらまた、もみじ学舎に戻るのもよし。写真を撮るだけでなく、ドライブとウォーキングもぜひ楽しんでください。
(※「もみじ学舎」のカフェやショップをご利用になる場合は、営業日をお確かめください)

何気なく置かれた看板も、絵になる一コマ。

いかがでしょうか? 旬の味覚を堪能し、名所をめぐったその後には、成り行き任せで里山を散策する。そんなスローな旅時間も温かく迎えてくれるまち豊前。

豊前市で、みなさんだけのふるさとの風景探しをしてみてはいかがでしょうか。
活まちの旅する記者 Tao

〈施設の情報〉
◆岩屋活性化センター(岩屋公民館)
所在地 〒828-0082 福岡県豊前市大河内
電 話 0979-88-2002
※土・日・祝日は休館。展示をご観覧の場合は、期間等をご確認の上、お出かけください。

◆もみじ学舎
所在地 〒828-0077 福岡県豊前市上川底858
電 話 0979-84-8155
※不定休、開店する曜日に変動がある場合があります。お出かけ前にご確認ください。