東川町に移住して2年目の夏を迎えました。今年の夏は、昨年とは全く違う感覚で夏を満喫しています。ひとつは、農園をお借りして、野菜作りを始めたこと。もうひとつは、町を流れる忠別川に沿った道を歩くようになったことです。農園は、自信がなかったのですが、友人に勧められてお借りしました。畑仕事は、隣町に住んでいる知り合いのおじいさんに鍬やスコップなどお借りして始めました。おじいさんは、畑仕事についての経験が全くない私に手取り足取り教えてくださり、玉ねぎやジャガイモを一緒に植えてくれました。90歳近くになるおじいさんですが、畑での作業が驚くほど速いのです。おじいさんが、あっという間に行った作業が、私がやると何倍もの時間がかかりました。今は、水かけや石拾い、草取りに毎日、畑に通っています。トマトやナス、サニーレタスの苗、父から送られてきた人参や大根の種も撒き、畑がだんだんにぎやかになってきました。畑に行くと、作業に夢中になり1時間や2時間は、あっという間に時間がたってしまいます。そんなことを繰り返しているうちに、畑に行くことが楽しみになってきています。
畑からは、旭岳や大雪山の山々を望むことができます。朝もやの中にうっすら見える旭岳や真っ赤な夕焼けに染まる旭岳を見ることができるのは、本当に贅沢なひとときです。夢中で草取りをしている時も、ちゅんちゅんと鳥の声が聞こえてきて、空を見上げると小さな鳥が楽しそうに飛んでいるのが見えます。時には、ゆうゆうと風に乗って飛んでいる鷹のような鳥も見ることができ、深呼吸をしたくなるような気持ちになります。そんな時は、幸せだなと心の中で、いつもつぶやいています。畑仕事でこんな気持ちを味わうことができるなんて思ってもいませんでした。
私が、畑に向かうまでに通る道は、田んぼや畑が広がる気持ちの良い道です。その道を通る時に楽しみにしていることがあります。それは、その道沿いある水路を見ることです。その水路には、透明で綺麗な水がいつも勢い良く流れています。その豊かな水の流れを見るたびに、なんて豊かなんだろうと毎日のようにつぶやいています。そんな豊かな水の流れを見ていると、水道から出てくる天然水にも感謝の気持ちが湧いてきます。心が沈んでいるような日もこの水路から元気をもらい、畑に向かっています。
もうひとつの私の楽しみは、忠別川沿いの道を歩くウォーキングです。忠別川の川の名前の由来は、アイヌ語でチウペツ（Chiu（波）－pet（川）)と呼び、波だつ川の意味が語源とされているそうです。その名前の通り、町を流れる忠別川は、白波をたてて勢いよく流れています。私が歩いている道は、川までの距離があり、その間には冬場の雪を溜めて置く広い雪堆積場があります。冬は、雪でいっぱいの雪堆積場も夏は、青々とした草が一面に生えて、気持ちの良い広場のように見えます。そんな景色を見ながら、歩いていると木々がたくさん立っている場所が見えてきます。その場所は森のようにも見える場所で、そこから川は見ることができません。そのくらい川幅も広く、素敵な自然が広がっています。
そんな景色を見ながら歩いていると、まるで森の中を歩いているような気持ちになります。鳥の声はもちろん、勢いよく流れる川の音、小さい頃に家族で行った山の中のキャンプ場で聞いた虫の声も聞こえてきます。その虫の声を聞くと、小さい頃の思い出が蘇ってくるようで、懐かしい気持ちでいっぱいになります。
たくましく立ち並んでいる木々を見ながら歩いていると、木々や草花が、話しかけてきてくれるような気がしてきます。大きな木を見上げると、木の先端は風で大きく揺れています。風に揺れる葉っぱは、さらさらと音を響かせて語りかけてくるようでした。
悩みがある時に大きな木を見ると「楽しんで！喜んでいるからこんなに大きくなれたんだよ。」と私を応援してくれるような言葉が浮かんできます。雨が降った後の木の葉は、雨を含んで重そうに見えました。重そうだなと何となく思っていると、「この重みは、恵み。感謝しているから重くない。」と答えのような言葉が浮かんできたりします。自然を見て浮かんでくる言葉は、とても温かく、私の心をいつも元気にしてくれます。
今は、自然を見て、思い浮かんだ言葉を書き留めておくようになり、その言葉をもとに物語を書くようになりました。物語は、美しい自然に囲まれて生活する日々の中で、自分の心が少しずつ変わり、心の中にあったものが溢れてきたような感覚で、楽しみながら書いています。
移住1年目の昨年は、近隣の町や観光地によく出かけていましたが、2年目の夏は、昨年とはまた違う素敵な夏を楽しんでいます。
東川町民 自然に親しむF