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「ふるさと納税」ではなく「ふるさと株主」に取り組む東川町の想い

まなぶ   試す   やわらぐ  
2022.1.19

調査のため、何度か東川町を訪れるうちに、この町のことや出会う人達のことを、段々と好きになってきている自分に気付きました。
ヒアリングに訪れたある日、役場の職員さんに、「すっかり東川町のファンになっちゃったんですよね~」と話したら、「それはうれしいなあ。じゃあ、ぜひ、東川町の株主になってくださいよ!」と、パンフレットを渡されました。

町の株主?!企業じゃないのに株主ってどういうことですか?!
「うちの町は、町民だけでなく、町外の色々な方と一緒に、まちづくりをしていきたいんですよね。だから、実現したい事業に『投資』してもらって、『株主』としてまちづくりに参加してもらう仕組みを作ったんです。」
東川町の事業に投資できるんですか?
「そうなんです。対象となるプロジェクトの中から選んで、1株1000円以上で投資していただきます。と言っても、おっしゃる通り、企業じゃないんで、ふるさと納税の枠組みを活用した寄附の制度です。『ひがしかわ株主制度』という名前なんですよ。」
じゃあ、「株主」は寄附(ふるさと納税)をした人のことで、「投資」は寄附(ふるさと納税)のことなんですか?
「その通りです。東川町では、『株主』になってくださった方々と一緒にまちづくりをしていって、それを大きくできればできるほど、町の力が強くなると考えています。だから、投資対象となるプロジェクトは、単に町がやりたい事業とか、町民だけのための事業ではなく、投資してくださった株主さんにもメリットがある事業や、より幅広い多くの人のための公益的な事業にしています。」
なるほど!ふるさと納税をする時には、どの自治体でも、応援する事業を選ぶようになっていますけど、その自治体に住んでいるわけではないので、今イチ実感が湧かなくて、いつも困ってたんですよね。単なる応援じゃなくて、一緒にまちづくりに参加するならどれか、自分にも関係あるものはどれか、という視点なら選ぼうという気になります。
「一緒にまちづくりに参加してくださる方だから、という気持ちで、株主さんには全員に『株主証』を発行し、町外の方の場合は『東川町特別町民』に認定して、認定証もお贈りしています。毎年『株主総会』も開いていますし、『株主優待』もあるんですよ。」

東川町の株主総会

株主制度にこだわってますね~。どんな内容なんですか?
「『株主総会』は、株主やご家族の皆さんに、東川町を訪れて、町のことを知っていただくために、毎年秋に開催しています。全国から株主の方々が東川に集まってきてくださるんですよ。植樹体験や食事会などを通して、東川町とのつながりを強めていただくのですが、毎年来てくださる方や、延泊してゆっくり滞在される方、町民との交流を楽しみにされている方も多いです。」
企業の株主総会とは、かなり違いますね。
「そうですね。でも株主ですからね、投資した事業についての質問や、こうしたらいいんじゃないか、というご意見もいただきますよ。『株主総会』では、職員から事業の説明をして、意見交換をするんですが、なかなか活発で、参加意識を持ってくださってるんだなあ、とうれしく感じています。」
株主優待は、ふるさと納税の返礼品ってことですか?
「もちろん、それもありますが、町の宿泊施設に、割引や無料で泊まっていただけたり、株主限定の農産物やワインを購入できる企画もあるんですよ。町の公共施設を町民価格で利用できるとか、地元企業と連携したサービスも提供しています。株主の皆さんには、どんどん東川に来てほしいと思ってるんです。」

東川町のワイン「kitoushi」

ふるさと納税は、本来は、その自治体を応援する寄附のための制度として作られたそうですが、普段は、そんなことは忘れて、お得な返礼品を手に入れるために、ポータルサイトを見ていました。
でも、東川町の「株主制度」は、そもそもの目的である「応援」よりも更に進んだ、一緒にまちづくりする人を増やす取組で、普通のふるさと納税とは一味違うようです。
そういうところが、この町のファンになった理由かもしれないな、などと思いながら、年末ギリギリに、私も「ひがしかわ株主」の一員になってみました。

活まち大学大学院
院生C