私たちを冬の間、十分に温めてくれた薪ストーブの掃除をする。
ストーブ内の灰は全て取り去ってしまわず、薄く残しておくのが、来シーズンにすぐに火をつけるコツだ。
我が家では薪ストーブと灯油パネルヒーターとを併用して、マイナス20度にもなる冬の寒さを凌いでいる。薪ストーブは着火さえすれば、真冬に窓を開けなければならないほど暖かいのだが、夜に焚いても薪が燃え尽きてしまい、朝まで暖かさがもたない。そのため、夜に焚き、寝る前にパネルヒーターをつけるというのが基本的な過ごし方である。
薪ストーブの時期が終わると、マイナスとプラスの気温を繰り返し、積雪と融雪を繰り返しながら徐々に春に近づいていく。
今年に関して言えば、非常に暖かく、3月中に道路にはもうほとんど雪は無くなっていた。
道路に続いて、田畑の雪が無くなってくると、北から愛らしい旅人がやってくる。
ハクチョウだ。
ハクチョウは、落ち穂などを目当てに雪解けの田んぼに飛来する。
大体毎年2週間から1か月ほど滞在していると思うが、朝にどこかからやってきて、日暮れと共に去っていく。ガーガーとかなり大きな声で鳴きながら飛んでおり、体も大きいのでこの時期にハクチョウを見ること自体は容易である。
田んぼでの様子をじっと観察する。くちばしを突っ込みながら、水をすくうようにして懸命に餌を探している。餌を見つけると頭を上げ、それを飲み込むのだ。
一方、餌はそっちのけで数羽で向き合い、羽をバタバタとしながら鳴いている個体も見かける。ツルの求愛行動と似ているが、何となくそんなロマンチックなものではなく、若者が集まって仲間とワイワイと盛り上がっている様に見える。彼らにも個性があるようで見ていて楽しい。
田んぼの雪が全て無くなってからもしばらく滞在したが、4月半ば、彼らは次の目的地へ旅立っていった。
雪解けの田畑で動き出すあの人気者を撮りたいと思い、10日程動き回ったが見当たらない。そもそも春は天気が安定せず、雨や厚い雲に覆われる日が続くため、撮影日和は多くないのだ。
久々に晴れたこの日も、朝と夕に探したが見つからず、諦めて夕焼けで染まる山とハクチョウを撮ろうと車を降りてスタンバイしていたその時だった。私を警戒する様子もなく、お目当ての彼はトコトコと畦道を歩いて近づいてきた。大きな獲物を咥えたキタキツネだった。
キタキツネは東川に住んでいればよく見かけるのだが、これほど大きな獲物を捕らえたところは見たことがない。一般的には警戒心が強く、なかなか近づかせてもらえないのだが、彼はおそらく咥えているものが大きくて、速く走ることができず、歩くルートも変えられず、不本意ながら私に近づいてしまったのだろう。
微妙な距離を保ちながら後を追ってくる邪魔者に、ご馳走を取られるのではないかと思ったのか、彼は「取られるくらいなら、この場でできるだけお腹に入れてやる。」と言わんばかりに堂々と食事をし始めた。
しばらくして、食事が略奪されないと悟ったのか、警戒をしながらも後日食べるために一部を田んぼに埋め、残りを再び咥えて歩き出した。
私はそれ以上追いかけなかった。
再会できることと、次回は食事中ではなく、人気者らしい可愛い表情を見せてくれることを願っている。
北海道中央部にある大雪山連邦。
この山々からの雪解け水が地下水となり、その水を東川町民は生活水として利用している。全国でも珍しい上水道のない町なのである。
雪の残る山並みは、晴れの日にはとても美しく見える。
この日は午前中に息子をサッカーの練習に送り、そのまま娘とデートだ。
練習が行われる東川町ゆめ公園サッカー場は、照明設備を備えている人工芝サッカー場だ。防球フェンスもある。週末には試合のため各地からサッカーチームが集まる。素晴らしい環境である。
すぐ隣には野球場や天然芝の多目的広場があり、散歩が楽しめる道もある。
その散歩コースで、娘のキックバイクの練習を見ながら歩く。
天気はとても良いのだが、10度以下と気温は低い。
しかしながら、つい先日まで雪で覆われていた道を歩くのは気持ちが良いものだ。芝はだんだんと緑が濃くなってきている。
写真を撮っていると娘がどんどん進んでいってしまうので、慌てて追いかける。少しだけ体が温まってきた。
例年、ゴールデンウィークが近づくと東川にも春の風物詩が訪れる。そう、桜である。
東川の桜の名所といえば、キトウシ森林公園だ。約400本のエゾヤマザクラが花を咲かす。その時期になると、山の一部分だけが鮮やかなピンク色に染まるユニークな景色が見られる。
あいにくゴールデンウィーク期間は天気の悪い日が多いのだが、それでも花を求め、多くの観光客で賑わうのだ。
桜の時期が終わると、田植えの時期が始まる。水張りをした田んぼが空を写す様はまた美しい。
田植えの時期が終わると、一気に緑や花の時期となる。
様々な美しい自然の景色と共に、東川の春は移ろうのである。
写真の町東川の写真家SOU
四季折々の東川の景色や家族の様子などを私のInstagramアカウント(@prophoto_sou)でも発信しております。ご興味ある方はぜひご覧ください。