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ひがしかわさんぽ
 

たのしむ   挑む   試す  
2023.9.15

 

私は東川で写真業を営んでいる。
レンズ交換式のカメラを使用しており、撮影にはたくさんのレンズを持って行く。しかし、今回は一本のレンズのみを持って、撮影散歩に出掛けたいと思う。撮れないものは撮れない、そう割り切って撮影散歩を楽しみたい。
持ち出したレンズの細かい説明は各日の初めにすることにして、レンズの基本的な知識を一つだけ紹介しておく。レンズにはそれぞれ焦点距離というものがあり、簡単に言えば、どのくらいの範囲を撮影できるかを表している。例えば、24-200mmというレンズは24mmから200mmという範囲をズーム撮影できる。24mmはかなり広角(広い範囲が写る)で、200mmは望遠(狭い範囲が写る)だ。名称に範囲のない、例えば200mmというレンズはズームができない単焦点レンズと言われる。このことを踏まえて読むと、より楽しんでいただけると思う。

【1日目】

早朝。晴れ。前日は30度以上の暑さだった。
今日のレンズは100mmの単焦点マクロレンズ。100mmはやや狭い範囲を写す中望遠と言われる距離。通常のレンズは被写体に近づくとピントが合わず撮影できなくなってしまうのだが、マクロレンズというのは被写体に近づき、大きく写すことのできる特殊なレンズである。
鳥の声を聞きながら、近所を歩く。
普段2台のカメラを持ちながら撮影しているので、1台だととても身軽だ。

水田に着く。たくさんの朝露が降りた稲穂が太陽の光を浴びて輝いている。写真は朝露がより見えるように暗めに仕上げている。

水田のすぐそばに咲く小さな花。被写体をクローズアップし、背景は朝露の玉ボケに。これがマクロレンズの魅力だ。花についた水滴も非常に詳細に描写されている。

子どもが作ったのだろうか。泥のさくらんぼのようなものが公園のベンチに置かれていた。朝の斜光がそれの側面を捉えている。

【2日目】

夕方。曇り。遠くに少し晴れ間が見えてきたので、散歩に出かける。
今日のレンズは14-35mmの広角ズームレンズ。人間が注視しない時の視野は35mmに近いと言われているので、14mmは人間の視野を遥かに超えた超広角と言える。

場所はサッカー場や野球場などを併設している東川町のゆめ公園だ。

着いてすぐ、雲間から覗く青空に親子たちのシルエットが重なった美しい写真が撮れた。
焦点距離は35mm。
この日はサッカーの大会があり、たくさんの人たちで賑わっていた。

台風の強風で天気が瞬く間に変わっていく。日が落ちる頃には晴天が広がっていた。
美しい雲と夕日を14mmで捉えた。

【3日目】

夕方。晴れ。少し雲が広がっている。
今日のレンズは85mmの単焦点レンズ。私の一番のお気に入りのレンズだ。
単焦点レンズはズームができない代わりに非常に画質がよく、大きなボケが得られるものが多い。
自宅近くをふらふらと歩く。

出発してすぐに、犬の散歩をしている知り合いの男の子に出会う。
夕方の光を浴びた犬の写真を撮らせてもらった。単焦点レンズらしい高い解像感と滑らかなボケが見てとれる。

また少し歩くと、咲いている数輪のバラを見つけた。逆光で撮影し、バラの儚げな美しさを表現してみる。

そのうちに夕焼けが広がってきた。東川町は薪ストーブの家が多い。煙突のシルエットと一緒に。

【4日目】

早朝。晴れ。台風の影響で風が強い。
今日のレンズは100-500mmのズームレンズ。超望遠域の500mmまでカバーする。
東川の大雪遊水公園を散歩する。

虫食いの葉がまるで切り絵のように見えた。周りに虫食いの少ない葉を配置し、写真中央に視線を誘導する。

大雪遊水公園には様々な鳥が生息している。その中でも一際美しいのがカワセミだ。以前、子どもと訪れた時に見かけたことがあったが、撮影できたのはこれが初めてだ。持ってきたのが超望遠ズームで良かった。

公園をぐるりと回っていると、おかしな光景を見つけた。一つの木に鳥が何羽も止まっているのだ。写真以外の場所にもおり、肉眼で見えるだけで6羽はいる。
帰って図鑑で調べると、アオサギの習性として集団で巣を作るそう。こうやって散歩で見かけたことを後で調べるのも楽しい。

 

【5日目】

朝。雨。遠くに晴れ間が見えてきた。
今日のレンズは50mmの単焦点レンズ。50mmは人間の視野に最も近いと言われ、「標準レンズ」とも言われる。その自然な距離感がスナップ写真に向いているとされているので、今日はスナップの様に気軽に撮ろうと思う。
キトウシの森へ赴く。

色とりどりのゴーカート。

 

連なるタイヤ。オープン前に許可を得て、特別にコース内で撮影させてもらった。

森の中にも遊具などが設置され、ワークショップなどで使われている。

雨に濡れた葉が一箇所だけ光を浴びて輝いている。主題ではない部分にはボケを配置して主題を目立たせる。

森の中で撮影していると段々と光が強くなってきていたが、森を出て帰る頃にはすっかり晴れ間が広がっていた。

 

【あとがき】

散歩の際に1本のレンズのみを持ち歩くことは、実は以前からしていた。ただ、これほど様々な種類のレンズを使用することはなかった。
この散歩の良い点は、撮れないものは撮れないと割り切ることで、そのレンズに適した被写体を探す感覚が鋭敏になることだ。また、当然のことなのだが、散歩のような短い時間でも撮影に出かけないと、良い景色を撮ることは決してできないのである。
皆様もぜひカメラを持って、近所を撮影散歩していただきたい。その時しか撮れない美しい景色が待っているはず。

 

写真の町東川の写真家SOU

 

今回載せきれなかった東川の景色や家族の様子などを、私のInstagramアカウント(@prophoto_sou)でも発信しております。ご興味ある方はぜひご覧ください。

【使用レンズ】
RF 100mm F2.8 L MACRO IS USM
RF 14-35mm F4 L IS USM
RF 85mm F1.2 L USM
RF 100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
RF 50mm F1.2 L USM

 

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