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東川のある移住家族の物語
 

動かす   たのしむ   すごす  
2024.1.12

 

東川に引っ越してきたのは2014年の秋のことだった。
元々隣町の旭川市に住んでいた私は、写真好きということもあり、「写真の町東川町」という場所に興味を持っていた。
休日によく遊びには行っていたのだが、家を建てたいと思ったのは分譲地が売りに出されていたのがきっかけだった。150坪程の広い土地だ。
その時、息子は1歳。動き回るようになり、アパートの2階に住んでいるのも手狭になってきたので、妻とも相談し、土地を購入することにした。
家が完成したのは土地を購入して1年後のことだった。
東川には分譲地によっては主に土地建物の景観に関する建築緑化協定というものがある。私の購入した土地についても、屋根は三角屋根にすること、家屋の外壁は自然素材のものを使用すること、植栽をすること、カーポートなどは木造とすることなどが決められ、東川の美しい景観が守られている。

 

 

東川は全国的にも珍しい上水道のない町で、生活用水を全て地下水で賄っている。
引っ越してきて感動したのは水の違いだ。
アパートの時と全く同じように米を炊くのだが、味が全く違うのだ。本当に美味しい。
水は引っ越しの動機の大きな理由ではなかったのだが、大雪山の雪解け水の力を知ると、東川に来てよかったと思う。
同様にコーヒーも味が丸くなり、とても美味しい。

すぐに雪の降る季節になるので、息子と一緒に薪を並べる。
薪は小さく割ってありストーブにそのまま入れられるものを買っている。冬が近づくと庭で薪割りをする、というライフスタイルに憧れなくはないのだが、この時はまだ会社勤めだったためさすがに時間がない。
薪置き場にどのくらいの薪が入るのかわからず、また、ひと冬でどのくらい必要かもわからなかったので多めに注文すると、取ることが大変そうな高さまで積み上がってしまった。

 

 

まもなく冬がやってきた。
初めて東川で迎える冬。薪ストーブは大変暖かい。
新しい家でどうなることかと思ったが、何とか凍えずに過ごせた。
家の裏は公園となっており、他の家は建たないので大きく広がっている。そこで息子とそり滑りをしたのはいい思い出だ。

 

 

雪がすっかり無くなり、花の季節がやってきた。
キトウシの森で見た桜は美しかった。
大体ゴールデンウィークあたりに開花するのだが、その時期は天気が悪いことが多く、なかなか週末にお花見日和となることがない。
しかし、この時の晴れ空と暖かさは今まででベストで、多くの花見客で賑わっていた。

 

 

夏は羽衣公園で花火を見て、秋は落ち葉いっぱいのキトウシの森で遊んだ。
東川を満喫した一年だった。

 

 

その後も東川の美しい自然と触れ合いながら、息子はすくすくと育っていった。

 

 

娘が生まれたのは数年後だった。
息子は兄になった。

 

 

生まれてきた子どもたちに手作りの椅子を贈る「君の椅子」プロジェクトは東川から始まり、近隣の自治体だけでなく本州にまで広がっている。
娘が東川でその年に最初に生まれた子どもだったようで、君の椅子の贈呈式に参加することができた。
椅子のデザインは毎年変わる。この年は遠くから見ると角張っているようだが、全体的に丸みを帯びており、手作りの温かさを感じる可愛らしいデザインだった。

 

 

言葉を覚えてコミュニケーションがとれるようになると、持ち前のひょうきんな性格を遺憾なく発揮し、娘は我が家のムードメーカーになった。
喧嘩することもあるが、息子は娘を可愛がっていて、よくふたりで2階の部屋で遊んでいる。

 

 

コロナ禍も収束の兆しを見せてきた。
「ひがしかわ氷まつり」は少し規模を縮小して2023年1月に開催された。花火も打ち上げられる東川の冬の一大イベントだ。
娘は小さな滑り台が気に入ったらしく、何度も楽しんでいた。
同時期に開催される旭川冬まつりと規模は比ぶべくもないが、手作りを感じられる愛らしい雪像や美しい氷彫刻をゆっくりと鑑賞できるのはとても気に入っている。

 

 

夏に行われた「ひがしかわどんとこい祭り」も多くの人で賑わった。
屋台では長い行列ができていて商品を買うのを諦めるほどだった。
初めて間近で打ち上げ花火を見た娘は、最初はびっくりしていたが、次第にその美しさに心を奪われていったようだった。

 

 

また冬が来た。
息子がちゃんと雪かきをできるようになってきたので、大雪でも少し気が楽だ。
薪ストーブをつけると、この時期でも家の中を半袖で生活できるくらい暖かい。
2024年はどんな年にしようか。
娘用のカメラを買ったので大雪山の雄大で綺麗な景色を見に行くのもいいな、と美味しいコーヒーを飲みながら思うのであった。

 

写真の町東川の写真家S O U

四季折々の東川の景色や家族の様子などを私のInstagramアカウント(@prophoto_sou)でも発信しております。ご興味ある方はぜひご覧ください。

 

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