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企業の地方移転を「自分事」にするために、福島県伊達市で妄想をはじめよう。

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2021.9.29

みなさんは、「企業立地」について考えたことはありますか?

テレワークの普及やIT技術の進化、企業立地促進法をはじめとした法整備、地方経済の活性化を目指した各自治体の優遇措置の充実などを背景に、地方への本社や事業所・工場移転の動きが活発化してきています。

特に最近では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業の環境変化が大きく起こり、「東京から地方へ」の動きが加速。人材派遣大手、パソナグループが本社機能を淡路島に移転したことや、芸能プロダクション大手のアミューズの富士山麓移転などが有名でしょう。

在宅勤務の推進により発生した「使われないオフィス」をそのままにするより、地方移転による賃借料のコストカットを優先したい企業が、従業員のワークライフバランス、取引先や人口の集積状況、テレワークの推進状況、話題性等、様々なことを鑑みて、地方移転やサテライトオフィスに踏み切った事例だと、捉えることができます。

そのような潮目ではありますが、いざ自社に落とし込んでみると、「地方移転なんて想像がつかない・・・」という方が多いのではないでしょうか。旅行先を考えるときは、暖かいところに行きたい、とか、海に行きたい、とか、自分の気持ちに素直になって「妄想」を始めることができるものですが、いざ企業立地となると、様々な要素を複合的に考えなければならず、妄想することすらも難しくなってしまうのです。

そこで本コラムでは、「あなたの企業の地方移転」を具体的に妄想しやすくするために、東京で積極的に企業誘致活動を行っている「福島県伊達市」の「保原工業団地」を例示し、企業立地において大切な3つのポイントを、解説していきたいと思います。

今回ご紹介するポイントは、①交通アクセス、②ワークライフバランス、③コストメリットの3つです。国土交通省による2020年8~9月調査「企業向けアンケート調査結果(速報)」内、「移転先に求める条件」の設問をもとに、選定しました。東京都内に本社をおく上場企業389社が回答したものです。
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001371777.pdf

なお、保原工業団地は、実際の企業立地にはいくつかの要件があります。本コラムは、あくまで妄想を促進するための例として福島県伊達市・保原工業団地を取り上げていますので、詳細な要件等を確認したい方は、伊達市公式ホームページ(https://www.city.fukushima-date.lg.jp/soshiki/20/46950.html)をご覧ください。

「もしもが自社が福島県伊達市に移転したら、どんなことが起こるか・・・」という妄想を楽しみながら、読んでみてくださいね。

(1)はじめに:福島県伊達市・保原工業団地とは

最初に、妄想を膨らませるための予備知識として福島県伊達市と保原工業団地及び保原エリアのご紹介をさせていただきます。

福島県伊達市の桃の花fukushima-date-ryozen福島県伊達市のあんぽ柿

福島県伊達市は、東京から約2時間、福島市の東側に位置する人口約5.8万人の自治体です。その名前のとおり、独眼竜政宗で有名な、伊達氏発祥の地。2006年1月1日、同じ伊達郡の伊達町、梁川町、霊山町、月舘町と合併して誕生しました。春はさくらんぼ、夏は桃・メロン、秋は梨・ぶどう・りんご、そして冬はいちごと伊達市発祥の「あんぽ柿」と、日本でも珍しい、1年中、途切れることなく旬の果物を味わえる土地で、米や「伊達鶏」、きゅうりなど、豊かな「伊達食」を誇るまちでもあります。

伊達市の保原工業団地

保原工業団地は、福島県伊達市の西部、旧保原町の中心エリア近くに位置する、令和4年度分譲開始予定の工業団地。開発面積は約13.94ha、分譲面積が10.64haとなっています。旧保原町は、かつては生糸の集散地、蚕取引の中心地として栄え、現在は、地場産業であるニット製造業や、誘致企業を中心とした電子機器関連工場が、町の基幹産業として定着しています。

(2)① 交通アクセス

ここから、本格的に妄想を膨らませていきましょう。まずは、「地方移転となると、不便なことが起こりそう・・・」と不安になりがちな、交通アクセスです。

■妄想編
福島県伊達市のアクセス

伊達市は新幹線停車駅である福島駅のすぐ隣のまちで、福島駅から車で20分ほどの距離に所在しています。伊達市に本社がある「阿武隈急行線」の駅が10つあり、1時間に2本程度の電車が運航しています。トピックスとしては高速道路の開通。令和3年4月、東北中央自動車道(福島―相馬間)が、無料区間として全線開通しました。これで伊達市は東北自動車道と常磐自動車道の間に位置することとなりました。空港の最寄りは仙台空港で、車で約1時間。港は、相馬港まで車で約40分、仙台港まで車で約1時間20分の場所に位置します。

また、保原工業団地は、最寄りの鉄道駅(阿武隈急行保原駅)まで約700m、最寄りのIC(伊達中央IC)まで約1kmの場所にあります。

 

■解説編

業種・職種によりますが、交通アクセスは多くの企業にとって重要な要素のひとつです。

先の国土交通省によるアンケート内「移転先に求める条件」でも、「自社拠点へのアクセス」「東京都心へのアクセス」「都市間交通の利便性」という回答が多いことがわかります。前者は社内での社員の行き来や物流を、後者はそれに加え営業的観点からそういった回答が多いと推測できます。

具体的には、物流においては、高速道路のインターチェンジや港に近い方が低コスト・時間短縮となります。事故や渋滞による遅延などの物流リスクの軽減という意味では、複数の物流ルートを持つことも、意味があります。出張する従業員が多い企業にとっては、新幹線停車駅や空港に近い方が有効的に時間を使うことができるでしょう。また、従業員の通勤や住環境、またお客様の来訪などを考えると、公共交通機関からのアクセスが重視する場合もあります。

あなたの企業は、交通アクセスでは何を重視していますか?また、移転した場合はどんなメリット・デメリットがあるでしょうか。ぜひ想像してみてください。

 ②ワークライフバランス

次にワークライフバランスです。企業移転におきかえると、地方で働き暮らすことにより、従業員の生活が充実し、業務によい影響を与えるかどうかが重要な点といえます。よく言われるのは、往復2時間の満員電車の存在しない、のどかな場所で暮らすことによる肉体的・精神的な疲労の軽減を期待する声です。伊達市はどのような環境で暮らすことができるのか、見てみましょう。

■妄想編

伊達市高子駅北地区土地区画整理事業
伊達市高子駅北地区土地区画整理事業(http://takakokitakumiai.or.jp/items)

 

伊達市は福島盆地の中に位置し、東京と比較すると夏はやや暑く、冬は3~4度低い気温となっています。その気候を活かした果樹栽培が盛んで、桃、りんご、ぶどうなど様々な果実が採れ、あんぽ柿も作られます。桜の花も有名で、果樹の花とあわせ、四季折々の景色が楽しむことができる場所です。
住環境については、阿武隈急行線高子駅すぐの場所に住宅団地を整備中(https://www.city.fukushima-date.lg.jp/soshiki/23/25371.html)。周辺には北区福島医療センターがあるほか、伊達桑折IC付近に大型商業施設が立地予定。保原工業団地から住宅団地まで車で約5分、大型商業施設まで車で約8分です。

福島県伊達市の児童クラブ福島県伊達市の認定こども園

 

そして、伊達市の代名詞といえば、「子育て(こそ伊達)」。伊達市版ネウボラ(妊娠期から育児まで、保健師や保育士などの専門家らが、切れ目のない支援を行う制度)や、大型遊具を有した4つの屋内遊び場、低額で利用可能な児童クラブなど、充実した支援を行っています。また、市内に7カ所の認定こども園と13カ所の放課後児童クラブが整備されており、待機児童ゼロが自慢です。市が準備した政策に加え、雄大な霊山や阿武隈川、里山が織りなす自然が、子どもたちを育みます。

■解説編
このように、伊達市は地方ならではの美しい自然と景色があるだけでなく、都会に遜色ない住環境・利便性を持ったまちです。また、都会より、自然豊かな田舎で子育てをしたい、という子育て世代の方にはぴったりのまちかもしれません。
一方で、車がないと不便な点が多かったり、人間関係の密接さや、東京と異なる気候等は考慮すべき点です。また、必ずしも全従業員が「田舎暮らし」を求めているわけではないことは、留意すべき点です。地方移転に踏み切ることで、従業員の心が離れていってしまっては、ワークライフバランスを重視した企業とは言えません。従業員の属性や性格を考慮し、想像していくことが大切です。

 ③コストメリット

企業が地方移転に踏み切る大きな要因のひとつに、コストカットやコストメリットの享受があります。移転にかかる費用やランニングコスト、現在借りているオフィスの賃料などはそれぞれですので、どのようなメリット・デメリットがあるか、妄想してみてください。

■妄想編
まずは保原工業団地の価格から。分譲地(1)10,000円/平方メートル、分譲地(2)~(7)13,000円/平方メートルとなっています。
保原工業団地の面積と値段

ビルディンググループ「2021年2月度 全国6大都市圏オフィスビル市況調査」によると、東京都内の平均オフィス賃料は22,983円/平方メートル。工業団地とオフィスでは単純比較はできませんが、当然大きな差があることがわかります。

また、伊達市独自の優遇制度も存在します。例えば「用地取得奨励金(https://www.city.fukushima-date.lg.jp/uploaded/attachment/52077.pdf)」。保原工業団地の用地取得に対して最大30%助成があります。「操業奨励金」は、保原工業団地で操業を開始した場合、固定資産税相当額が3年間交付交付されます。雇用に対しても助成があり、「伊達市雇用促進奨励金(https://www.city.fukushima-date.lg.jp/soshiki/20/7723.html)」は、新たに伊達市民を正規雇用した場合、1人につき50万円、3年間交付されます(※限度額1社あたり1,000万円/年)。国の優遇制度も利用できる場合があり、「地方拠点強化税制(https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/pdf/01gaiyou.pdf)」などが適用されれば、費用を大きく削減することができます。

 

■解説編

基本的に、地方に移転した場合は賃料がコストダウンし、初期費用も優遇措置があります。その他、パートやアルバイトを雇用する場合は人件費が安い、通勤手当や勤務地手当の削減につながる可能性があるなどのコストメリットがあります。

一方で、オフィスや事業所の建設費用や、設備投資や引っ越し費用などの初期費用がかかります。その他、以下のようなコストが発生する可能性があります。

・採用力が落ち採用募集コストが上がる

・取引先や社内の事業所と物理的に離れてしまった結果、想定より出張が多く宿泊交通費がかかる

・地方移転に乗り気でない従業員への対策で、新たな補助制度をつくる など

地方移転を考える場合は、外部・内部環境を分析し、適切な時期と場所を選ぶ必要があります。

 

(3)おわりに
いかがでしたでしょうか?福島県伊達市「保原工業団地」を例にすることによって、少しでも自社の地方移転について具体的に妄想できましたでしょうか。「東京から地方へ」が進むこの時代、企業の地方移転が少しでも「自分事」になっていただけたなら幸いです。

▼「保原工業団地」について詳しく知りたい方はこちら
https://www.city.fukushima-date.lg.jp/soshiki/20/46950.html

 

活まち出版社 新人ライターS