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鳥取県南部町で、鮮烈な「田舎の味」を楽しもう。~私の懐かしい味~

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2022.1.26

みなさんには、どこか懐かしい気持ちになるような、ノルタルジーにあふれた「田舎の味」はあるでしょうか。

故郷でよく使われる食材・味付けや、いわゆる「お袋の味」、旅行先で食べた名物料理など、様々なものが想起されます。

私はというと、苦い思い出の味が3つほど。食材の名前でいうと、柿、びわ、ざくろ。
文字どおりの苦い思い出と、1つは酸っぱい思い出です。

いずれも私が幼稚園に通っている頃の話です。
人口30万人ほどのベッドタウン、駅には「新●●駅」なんて名前のつく比較的新しいまちに住んでいました。当時はまだまだ開発途中の地域で、道路の植栽がきれいに整備されている一方で、ちょっと歩けば畑があるような、都会とも田舎とも言い切れない地域だったことを覚えています。

そんな地域なので、昔からあるようなお宅もたくさんあり、たいてい「近所のおばあちゃん」が住んでらっしゃいました。ブロック屏に囲まれた2階建てのお宅が多く、玄関の前の小さなお庭には、各ご家庭の趣味で柿、びわ、ざくろのなどの果樹が、よく植わっていたものです。そして、おばあちゃんたちは優しく親切に、木に実った果実を幼い私に勧めてくれたのでした。

柿、びわ、ざくろ。それぞれ別のタイミングですが、勧められるがまま、それがなんなのか理解しないまま食べたところ、未体験の柿の味(渋柿だったのかもしれません)やびわのぬるっと感、ざくろの激しい酸っぱさが幼い私の口内を駆け巡りました。こどもだった私にとっては、大人の味すぎて、とても耐えられない体験でした。これを上回る印象の食べ物が地元や家庭になかったので、残念ながらこれが私の「田舎の味」となってしまいました。

さて、時は移って現代。「近所のおばあちゃんのちの果物」の思い出に「田舎の味」を支配されてしまった私ですが、大人になるにつれ、好き嫌いなく、なんでも食べる大人へと成長しました。柿もびわもざくろも、食べる機会は少ないですが、美味しく食べることができます。

そして最近、新しい「田舎の味」を持つことができる予感がしています。

場所は、鳥取県南部町。米子から車で30分ほどの、田んぼが広がるのどかな田舎まちです。
ここは、特産の富有柿をはじめ、梅、うど、いちじく、ブルーベリー、いちごなど、たくさんの特産品を楽しめる豊かな土地なのですが、私にとっては特定の食材ひとつが「田舎の味」になりそうというよりは、まち全体が「田舎の味」を提供してくれていて、私の持つ悪い思い出を合計値で上回ってくれそうな感覚を持っているのです。

富有柿は、私の幼少期に食べたような柿でなく、とびきり甘く美味しいものを食べることができて、なにか新しい果物を発見したような気分になりました。
南部町産の旬の食材を利用したジェラート屋さん「pa cherry b パッチェリービー」も、素材の味が強く残っていて非常においしかったです。
南さいはく地域振興協議会が製造販売するゆず味・梅味・うど味のようかんも、初めて食べるのにどこか懐かしい感じのする味でした。

鳥取県南部町の田舎の味

食材や加工品の質が、自分の経験値と期待値を超えて、鮮烈な印象を残していること。
南部町の里地里山の風景が、私の思う「田舎らしさ」と重なっていること。
私の「田舎の味」が、幼少期の思い出から、南部町の特産である果樹になっていること。
これらのことが混ざり合って、南部町の味は、私にとっての「新しい田舎の味」となってきているのです。

「田舎」は、都会から離れた土地のことを指すこともありますし、自分の故郷を指すこともある言葉です。私にとっては、田舎はどこにいくつあってもいいもの。「田舎の味」も同じです。
そう考えると、出れば出るほど、新しい田舎ができるかもしれない。そう考えるとわくわくします。

みなさんの「田舎の味」はどんなものですか?それが、別の誰かの「田舎の味」になるかもしれません。この機会に、「田舎の味」談義を。

活まち出版社 新人ライターS