地方創生で多くの自治体が取り組んでいるのが、子育て世代の住民を増やすこと。
子どもが増えて、まちの未来につながる、という思いからですが、なかなか難しいのも実態です。
そんな中、鳥取県南部町は、子育て世代の転入が多いまちで、日経新聞の記事*によれば、2021年「30~40代の転入超過率が高い市町村」鳥取県第1位!です。
この「転入超過率」というのは、30~40代の「転入者数―転出者数」を同年齢人口で割ったもの(割合)で、南部町は1.9%。中四国でも第6位です。
南部町役場の職員さんに伺ってみると、実際に、お子さんが小学校に入学する前に、南部町に引っ越してくる人が多いそうで、1年間に町内で生まれる子どもの数よりも、小学校1年生の数の方が多いとのこと。
これはすごいことですね!
そうなると、気になるのは、その理由です。
職員さんによれば、転入してこられた方に質問すると、「子育て支援策が充実している」「自然の中で子どもをのびのびと育てたかった」「周りの人があたたかく見守ってくれる環境で子育てしたかった」といった声が聞かれるそうです。
安心して、豊かな子育てができるのだな、ということが伝わってきますね。
でも、子育て支援に力を入れている自治体は多く、南部町独自の要因が、他にもあるはずです。
そう思ってさらに調べてみたところ、2つの理由を発見しました。
まず1つ目は、南部町独自の空き家活用制度。
町内の空き家を、まちづくり会社である「NPO法人なんぶ里山デザイン機構」が、借り上げてリフォームし、賃貸しています。これまでに、44軒もの空き家が活用されているとのこと。
広々とした一戸建てを割安で借りられるとあって、人気が高く、入居希望も50世帯を超え、合わせて百数十名の方が待っている状態だそうです。
制度を始めた時は、リタイヤ後のシルバー世代をメイン・ターゲットと想定していたところ、実際に入居するのは子育て世代が多く、今や入居者の9割が、20~40代の子育て世帯で占められています。
空き家のほとんどは、写真のような、たくさんのお部屋がある庭付きの一軒家だそうで、子育て世帯のニーズにちょうどマッチしたようです。
もう1つは、移住希望者の相談・サポートをしてくれる専門の窓口があること。
空き家活用制度を運営している「NPO法人なんぶ里山デザイン機構」に担当者がいて、検討段階から相談に乗ってくれます。
周辺の自治体にはこういった体制がないそうで、頼りにできる人がいるところに、ついつい相談してしまうのは、人情というものですよね。
庭付きの広~いおうちで、子ども達をのびのびと育てられる住環境と、知らないまちへの引越でも安心できる、しっかりとしたサポート体制。
このような独自の施策が、鳥取県南部町に子育て世代を惹きつけているようです。
最近は、図書館やコワーキングスペースなどがある、おしゃれな複合施設や、子育て世代に人気のあるジェラート屋さんやカフェなど、ますます「行きたくなる」「住みたくなる」まちづくりが進んでいる南部町。
地方創生の研究対象として、引き続き、目が離せません。
活まち大学大学院
院生C
*出典:日本経済新聞 日経電子版2022年2月18日「来れ子育て世代 高知『二段階移住』、島根は空き家整備」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC149440U2A210C2000000/