12月初旬。
朝早く、品川でレンタカーを借りて、首都高に乗り、新宿をかすめ、東京競馬場を横目で見ながら、八王子を通り抜け、いつもは渋滞する中央自動車道(フリーウェイ)を順調に走って、久しぶりに都留にやってきた。
頭の中では、お約束のユーミンソング。
そこは、おじさんなので。
大事なことや、人の名前とか、忘れっぽくなったけど、歌詞は全部覚えている。
それは、おじさんの不思議なところ。
目指すは「御正体山(みしょうたいやま)」。
御正体山は、都留市と道志村にまたがる、標高1,681mの山。
その歴史は古くから信仰の山として知られている。
平成16年には皇太子殿下も御登頂された。
登山道からは、写真のような、綺麗な富士山が間近に見れる。
日帰り登山にもぴったり。
そんな情報をもとに、勢い込んでやって来たっていう訳さ。
で、あまりにも、すんなり都留に着いてしまったので、腕試し、いや、足慣らしに、
勝山城(かつやまじょう:地元の人たちは「お城山」と呼んでいる)に登ってみた。
初めて登ってみたのだけど、標高571mで、途中まで車で行けるからって、舐めてかかったのが大間違い。
結構キツくて、足はガクガクで、おまけに息切れして、大げさに言うと、心臓バクバクで死にそうだった。
一応、山頂まで行ったけど、誰もおらず、木のベンチで仰向けに、ただただ寝っ転がって、しばらく休憩して、動悸が収まって、直ちに降りてきただけなので、写真はないよ。
ということで、これが、おじさんの、あっぷあっぷのウオーミングアップ。
お城山のふもとの駐車場まで降りてきて、思い出したように、車に乗って来た道を少しだけ引き返す。
やってきたのは、これまたお約束の「やまもとうどん」。
いつもながらの歯ごたえのある麺と、いつもの美味しい馬肉の味を確かめながら、腹ごしらえが完了した。
しかし、今日は異様に暑い、12月なのに。
うどんのせい?
それとも、お城山の決死の登山のせい?
車の温度計を見たら、18℃。
「さあ、行くぞ」
自分を鼓舞するように、心の中で掛け声を出した。
車の窓を全開にして、勢い込んで「御正体山」の登山道の降り口へ向かう。
都留市街地から、道志村に向ける道に入り、しばらくすると、だんだん勾配がキツくなり、そして道も曲がりくねっている中を、車のナビを頼りに進んで行った。
道志村との境にある、トンネルの前から林道に入り、車で行けるところまで行ってみよう、というつもりでいた。
しかし、そこで目にしたものは。
よく見ると、ゲートの看板には、12月からの冬期は「通行止」って書いてある。
「うーん」
登山道の入口に、呆然と佇む、おじさん。
ちなみに、まわりはこんな感じ。
来た道の、その先方面。
走ってきた道。
行くか、戻るか、さあ、どうする。
さあ、どうする。
おじさんは、決断を迫られたのであった。
沈思黙考、って性格ではないので、そこはあっさりと、御正体山への登山も、高いところから富士山を眺めるっていう大目標も、そして、都留市内を楽しむことも、全部あきらめて、
いや、方針転換をして、トンネルの先に進むことにした。
実は、心が大きく動かされたのは、「道志まで11㎞」という道路の看板。
都留市役所の「おれっち」が、住んでいるのは道志村。
なので、それだけの理由。
「休日だけど、“おれっち”はいるのかな?」
「確か、道の駅があったけど、何かおもしろいモノ売ってないかな?」
「一番最近行ってから、もう、2年以上、経ってるかな?」
そんなことを考えていたら、頭の中が、好奇心で一杯になって、自分の目で確かめてみたくなったのが、おじさんの行動変容の、一番の理由。
さて、トンネルを抜け、10分ほどで、道の駅に到着した。
そこで目にしたものは、とっても、びっくり、びっくりの光景。
駐車場は、ほぼ一杯で、人がたくさんいる。
いや、正確には、オートバイと、ライダーで、ごった返しているって感じ。
写真に撮るのを忘れたけど、ただただ、驚きしかない。
東京方面から、ちょうど良い、ツーリングコースになっているんだろうなあ、ってことと、
これだけ人がたくさん来たら、結構、経済効果があるんじゃないかな、とか、いやいや、ただ来て、道の駅で休憩して、少しくらい買い物するくらいだったら、逆に、普通に暮らす住民の人たちは、どういう風に思ってるんだろうか、とか、いろいろ、考えてしまう、そんな
衝撃の光景が広がっていた。
あまりも人の多さに、ゆっくり休憩することなく、売店をちょっと覗いたくらいで、早々に道の駅を出て、山中湖のほうに車を走らせた。
この道は、「道志みち」って言うらしい。
そこで思い出した。
勝手に同士と思っている、“おれっち”のことは、すっかり頭の中から抜けていた。
「ごめん、“おれっち”。また、来るよ」
そんな、こんなで、なんとか山中湖まで辿り着いたところで、早くも時間が夕方近くになっている。
今日中に、東京に戻らなければ。
帰途に就かねば。
車のナビに、東京を入れると、富士吉田から高速に乗り、都留を通って、帰るルートが表示された。
今日走って来た道は、どこまでが「下り」で、どこからが「上り」なんだろう。
曲がりくねっていたり、暗いトンネルがあったり、都会の人がたくさんやってきていたり。
「上りとか、下りとか、考えなくてもいい世の中になればいいのに」
「やっぱり、同士は大切だよな」
そんな、取り留めのないことを考えながら、ハンドルを握っていた。
車窓から見えるのは、夕暮れの富士山と、まっすぐな飛行機雲。
おじさんの短い旅は、もうすぐ終わる。
活まち役場 まちづくり係K