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妄想がどんどん膨らみ、そして、満を持して「うみてらす豊前」へ。

親しむ   まなぶ   たのしむ  
2022.3.1

豊前海。
瀬戸内海の再西部、周防灘に位置する海域のこと、らしい。
水深は15mより浅く、干満差は最大4m、らしい。
良質な植物プランクトンを多く含む干潟が広がり、これを栄養分として魚が集まることから好漁場となっている、らしい。
シタビラメ、カサゴ、カレイ、コショウダイ、コウイカ、サワラ、スズキ、メバル、タチウオ、マナガツオ、アナゴ、ガザミ、エビ、アサリなど、たくさんの魚介が獲れる、らしい。
中でも、大ぶりで身入りのよいワタリガニ「豊前本ガニ」、手間をかけて一粒一粒丁寧に表面を磨いて殻付きのまま出荷する「豊前海一粒かき」はブランド化されている、らしい。
そして、それらを獲るための漁法は、小型船による定置網や底引き網、カキ養殖などがある、らしい。

全部「らしい。」と書いたのは、直接見たことがある訳ではないからだ。

仕事の関係で豊前市に、ちょくちょく訪問するようになってから、いろんな場面で目にする情報には、くだんの海の幸が登場する。

少し前、豊前市役所におじゃました際にお目にかかった豊前市長さんが、雑談の中で、
「うみてらすに行って、ザルに盛られたエビを買ってきて、どんぶり飯の上にのせて、しょうゆを垂らして食べたら、すっごく旨いよ。」
と言いながら、両手でどんぶりを持って、その上に山盛りのエビを乗っけてる感じを右手をお椀のような形で表現し、そして、箸を持って掻き込む様子を、まるで本当のどんぶりを持っているかのような仕草で、説明してもらったことがあった。

流行ことばを使って言うと、「エア海老丼」。
省略すると,AED。
うーん、ちょっと違うけど、衝撃を受けた点は共通してるかも。

いずれにしても、その時から、「豊前市」、「海産物」、「おいしそう」は条件反射的につながり、心に深く刻み込まれてしまった。

さて、さて、ここから先は、エアが現実となる日のことだ。
プロジェクトX風に。

202X年7月。
活まち新聞の記者Rは、ついに、この場所にやってきた。
名前は、「うみてらす豊前」。
「うみてらす豊前」は、地元の豊築漁業協同組合が、2008年に始めた「牡蠣小屋」が前身で、2016年にオープンした直売所と食堂が併設された施設だ。

訪問の機会を窺いながら1年が経ち、ようやく今日、ここまで辿り着いた記者R。
駐車場にレンタカーを止め、足早にログハウス風の建物に近づく。
入口から中に入ると、人の活気、賑やかな音、魚の売り場から流れてくる潮の香り。
否が応でも、テンションが上がってくる。

スマホの時計を見ると、12時少し前。
「今なら、2階の食堂で、すぐ飯が食えるかも。」
心の中で、Rはつぶやく。

はやる心のままに、階段を駆け上がり、食堂の前までくると、中の様子が見て取れた。
少しだけ空席がある。
安堵とともに、もう一度期待感が高まってきたのか、口元が少しにやけてしまう。

漁師食堂うのしま「豊築丸」。
目の前に広がる豊前海が一望できる、開放的なロケーションだ。

席に着き、メニューを見ると、一番に飛び込んできたのは「ハモ」料理の数々。

「ハモ」と言えば、吸い物とか、湯引きして梅肉で食べるとか、いずれにしても。夏の京料理の定番、高級魚のイメージだ。

そんな固定観念がある中で、店の人に勧められて頼んだのは「蒲焼き重」。
「美味しいですよ」と言われたことと、店内に漂う香ばしくて甘い香り、わかりやすく言うと、鰻屋の店内のような匂いにつられて、ハモの蒲焼きをオーダーした。

食事が運ばれて来る間に、スマホでググってみる。

ハモの旬は、ちょうど今の時期、6月から7月と、産卵を終えて脂がのってくる9月から10月。
豊前海のハモは、四季折々のいろんな魚介を食べて育つので、ハモ自身も、とても旨く、実は、高タンパクで、低カロリーなヘルシーな食材。
大きいものは1m以上、重さも1㎏にもなる。
気性は荒く、「海のギャング」と言われるほど、食欲旺盛で、動くものなら何でも口に入れてしまう。
水がなくても、少しくらいなら生きていられるくらい、生命力が強い。
ハモは、およそ500本の小骨があるので、薄い皮を残して、この小骨を垂直に細かく刻む、いわゆる「骨切り」の包丁捌きが難しい。
ここの1階では、買ったハモを、200円で骨切りしてくれるらしい。
骨切り専用の機械を設置している。
何と、機械の値段は、数千万。

と、ここまで調査したとところで、蒲焼きが運ばれてきた。

エアじゃなくて、正真正銘の本物。
エビじゃなくて、ハモだけど。

見た目は、鰻の蒲焼よりも色が薄く、少し白みがかっているように感じる。
骨切りしてるので、一つ一つの山の表面はふっくらと盛り上がり、まるで、満員電車の中みたいだ。
そして何より衝撃なのは、香りがとても上品で、温かくて、香ばしいことだ。

鱧の蒲焼き

プロジェクトX風はここで終わりにしよう。

おもむろに箸を取って、蒲焼きを割って、口に入れてみた。
「旨い」

鰻の蒲焼きよりはプリプリしてて、脂っこくなくて、でも噛むととてもコクがある。
初めての食感と味。

私はこの後、あっという間の短時間で、ハモの蒲焼きを平らげ、そしてその後、1階に降りて直売所を覗いてみたんだけど、たくさんの魚が生け簀や、かご、ザルで売られていたことは覚えているが、食堂で食べたハモの記憶が強烈すぎて、正直、よく思い出せない。

まあいいか、近いうちにまた今度、「うみてらす豊前」に行ってみよう。
エビはその時にはあるかな。

まあ、なかったとしても、美味しいものが結構あるみたいだ。
そう思いながら、もらってパンフレットの写真を眺めている。

最後に一つ。

今更だけど、よくよく見ると、ハモは、漢字で書くと「鱧」。
魚偏に豊。

なるほどね。
栄養が豊っていう意味もあるのかもしれないけど、豊前市の「豊」じゃない。
自分的には、ちょっとした発見だ。

活まち新聞 記者R

出典:「うみてらす豊前」HPより(https://umiterrace-buzen.com/syunkai.html