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【イベントレポート】
「逆」で手に入れる自分らしい暮らし

すごす   やわらぐ   つくる  
2022.1.15

北海道のほぼ中央に位置する東川町。大雪山の豊かな自然と『旭川空港から車で約10分』というアクセスの良さを兼ね備えるこの町に、ちょっと変わった暮らし方をするご家族がいます。逆転の発想で手に入れた新しい生活、その魅力をリアルな声とともにお届けします。

新しい人生のあり方「逆単身赴任」を考える会議 ~北海道東川町の教育環境と家族のかたち~
新しい人生のあり方「逆単身赴任」を考える会議
~北海道東川町の教育環境と家族のかたち~
2021年10月23日(土)13:00~

 

『単身赴任』。その言葉からは<仕事の都合で家族を残し地方へ赴く姿>が思い浮かびます。では逆に、子育てにあった環境を求めて家族が地方へ移住してみたら、そこにはいったいどんな暮らしが待っているでしょうか? 今日はそんな『逆単身赴任』を選んだ2組のご家族が登場します。

では、さっそくイベントの様子を見ていきましょう。最初は東川町税務定住課住まい室の今野室長が、東川の教育や子育て環境を紹介していきます。

東川町紹介01

北海道のほぼ中央に位置する東川町。旭川空港や旭川駅からほど近く、人口もここ20年間微増を続けている。
東川町紹介02

東川らしさを表す言葉が「東川スタイル」。豊かな自然や食、美しい景観やアートなど、教育を含め様々な施策が東川らしさを形づくり、それがまちの魅力となって人々を呼び寄せる。
東川町紹介03

乳児保育から学童保育まで様々な施設が充実。まちのシンボルともいえる東川小学校は横に長い平屋造りで、中には壁のないオープンな教室が並ぶ。
東川町紹介04

教育コンテンツも多彩。その中から今野室長ご自慢の3つをご紹介。1つめは、国際感覚を養いコミュニケーション能力を育成する新教科<Globe>。町立の日本語学校を有する東川町だからこそ実現した授業。
東川町紹介05

2つめは、自分で育てた食材を自分で食べる「美味しい給食」。小学校に併設された体験農園で米や野菜を収穫し給食に利用。他にも「世界の給食」の日を設けるなど東川らしさ満載。
東川町紹介06

最後は子どもが楽しめるプログラムやイベントの数々。運動や勉強以外に<天然水で暮らすまち>ならではの、源流を探る「水育(みずいく)プログラム」も提供される。

次はいよいよ『逆単身赴任』を実践するご家族の登場です。東川町税務定住課の吉原課長をMCにトークセッション形式で進んでいきます。このレポートでは今野室長おすすめの『東川町の過ごし方』も併せてご紹介します。

ゲスト紹介

左から東京から参加の板橋(夫)さん、髙橋さん親子、板橋さん親子、吉原課長


1組目は板橋さんご家族。2021年3月に奥さんと小学校5年生の娘さん、小学校2年生の双子の息子さんの計4人で東川町に移住しました。旦那さんは東京都に住みながら神奈川県横須賀市へ通勤しています。

もう1組は髙橋さんご家族。おなじく2021年の3月、娘さんが小学校へ入学するタイミングにあわせて奥さんと2人で移住。旦那さんは埼玉県に住みながら県内に通勤しています。

── 最初に、全国たくさんある自治体の中で「どうして東川町だったのかな?」と、その辺をお伺いしたいと思います

板橋さん 私はもともと旭川市出身で両親も北海道に住んでいます。ずっと前から「子育てを北海道でしたい」とあちこち探していた時、たまたま父親から「東川町が良いんじゃない?」と言われて。そこから調べ始めたら、とんとんとご縁が繋がって東川町に来ました。

髙橋さん 私も夫の実家が旭川で、「道の駅」とかで東川町の存在は知っていましたが、「きみの椅子」を知ったときに「ああ、すごく面白い事をしているなぁ」と。「老後に退職したら移住しても良いよね」とは言っていたんですが、去年(2020年)の移住ツアーのパンフレットを娘がとても気に入ってしまいツアーに参加、もうまさに何十年も早めて移住をしてしまったという感じです。東川町とは7、8年前から関わりがありましたが、いざ移住を決めたのは娘でした。(笑)

2020年度版移住相談ツアーパンフレット2020年度版移住相談ツアーパンフレット



── 移住相談ツアーで実際に東川町に来てみて、想像との違いって何かありましたか?

板橋さん 私は昔の東川町を知っていたので、「えっ、今はこんな風になっているの!?」みたいな驚きがありました。(笑) ツアーに参加したのは、夫に東川町を見てもらって『空港からも近いよ』とか『こんな環境良いじゃん?』とか、最終確認してもらうためにツアーを利用させていただきました。

板橋(夫)さん 妻からはずっと北海道に住みたいとは聞いておりまして。北海道に住みたいといっても自分は東京で仕事をしているものですから「移住って言われてもなぁ」っていうところが正直あったんですが、移住体験してみてやっぱりすぐに東川町が魅力に感じたし、最終的に『移住しましょう』って話になりました。

髙橋さん 今までは「旅行する所」としての東川町だったので、「いざ暮らしてみるとしたらどんな感じなのかな?」と思って自転車を借りて、カフェとか学校とか公園とか結構ぐるぐる回ったり。ツアーも、陶芸させていただいたり、カヌーに乗せていただいたり、山登りしたり。旅行とは違った「町の中でできること」っていうのが体験できて実感しました。移住ツアーを体験してから来られると、そこで知り合った方とも町中でたくさん会うので、ぜひおすすめしたいと思えるツアーでした。

東川町おすすめ01

東川町が提案する親子の過ごし方 ─ 体験型観光プログラム ─
東川町内には大雪山連邦の自然や農業資源など多くの観光資源があり、その資源を活用した観光プロブラムを提供する企業等が多く進出している。


── ネガティブな事も質問してみたいなって思うんですけれど、実際別々に生活されてみてご家族とかお子さんの様子とかどんな感じですか?

板橋さん うちは夫の仕事柄1年の2/3居ないっていう状況なので、生活的にはほとんど何も変わりは無いです。ただ、やっぱりこっちに来た方が動きやすいっていうのはすごくあって。東京だと色々制限もかかるし、交通手段も電車とかバスとかに限られちゃうと、双子を連れてプラスお姉ちゃんもってなったら、もうほんと大変で。こっちだと車で…まあちょっとバタバタはしますけれど行動に自由が利く。あと、人が少なくて接触が少ない分ストレスも少なくて、安心して…というか、気兼ねなく自分の時間を作れたり。そういう点では、子ども達っていうより私自身がすごく動きやすいなっていうのはありますね。すみません、あまりさみしいとか考えている暇も無く、一日あっという間に過ぎていきます。『次に何楽しい事しようかな」って思っています。(笑)

髙橋さん 私も夫の勤務が24時間シフト制で、土日も関係なく毎日違う時間に出かけて帰ってくる。全国転勤もある仕事ということで、転居も覚悟していたんですけれどまだ動いてはいないです。移住は夫も賛成で、夫の方が「行ってくれば?」って言うぐらいだったので、休み毎に帰って来てこっちで休んだり、娘と一緒に過ごしたり。私も、私と子どものリズムで生活ができる上に休日には夫が帰って来てくれるので、さみしいというより程良い距離感で…これは夫も言っていたことなんですけれど、「ひとりの時間」も持てて、「一緒の時間」も持てて、気分転換にもなって…っていうのが『ちょうど良いね』って話はしています。

東川町おすすめ02

東川町が提案する親子の過ごし方 ─ キトウシ森林公園家族旅行村 ─
アウトドア施設が充実。パークゴルフ場、キャンプ場、スキー場、人口温泉、長期滞在可能な宿泊施設ケビンを設置。


── 東川に移住されて、お子さんの変化やご自身の環境の変化みたいなものって何か感じられていますか?

板橋さん 確かに良いことばかりではなくて大変は大変になると思います。特にこれから冬なので、雪かきとか、そこはなまやさしいものではないんじゃないかな?とは思ってて。子ども達にも自分一人で向き合わなきゃいけないので、子育てっていうところでは悩みは尽きないです。

ただ、私自身は大変だけれども動いている方が好きだし、自分のタイミングで動けるっていうところと、周りにイライラした人が少ないっていうのがいちばん楽(らく)で。東京にいると電車に乗るだけで疲れちゃう。音もそうだし、なんかそういうのが無くなって、聞こえるのは虫の声とかカラスの声とかカエルの声とか。木々がそよぐ<サワサワ>ってその音だけでも「あっ、私やっぱこれだなぁ」って。なんかそういうところで、大変だけれどもエネルギーをもらっているっていう日々ですね。

髙橋さん 娘は虫が苦手だったんですね。家の中にアリンコがいるっていうだけでものすごい大騒ぎをしていたんですけれど、それが最近は、まずカエルはつかまえられる様になったんですよね。トンボはもうちょっとのところまでいくんですけれど。(笑) やっぱり周りの子がそんなに怖がらないので、そういうのが自然にできるようになってきたり。

あと、学校は30分歩くんですけれど、ちょっとシュッとしましたね。コロナ禍であまり外遊びとかができない時期もあったので、取り返すかの様に一生懸命歩いて。学校でも一生懸命走り回っていたりとか。うちは東川小学校のオープンスペースなところは問題がないタイプで、1組の子と2組の子と両方とも遊べる、ともすれば2年生とかまでずっとわかっているって状態なので、友達の幅は広がって、いろんなところで友達に会えるようになりました。こちらにきてまだ半年ぐらいなんですけれど、ずいぶんお友達が増えてきたなぁと思っているところです。

東川町おすすめ03

東川町が提案する親子の過ごし方 ─ スポーツ少年団 ─
野球少年団、サッカー少年団、バレーボール少年団、ミニバスケットボール少年団、クロスカントリー少年団、チアリーディングsnow bell、剣道少年団、アルペンスキー少年団、水泳少年団。東川町には色々なスポーツを選択する機会がある。


── あっという間に時間が来てしまいました。最後に、半年ぐらい東川町を経験されて「ここをこういう風にしたらもっと良いのにな」みたいな<まちに対する要望>がありますか?

板橋さん 移住ツアーとかで「水道水がタダ」みたいな話を聞くんですけれど、「タダだから来る」のではなく「100年かかって仕上がった水をいただいている、守る」っていう気持ちを持てるような語りかけを町からしていただいた方が良いんじゃないかな…というのも、いま本当に「移住したい」という方が多くて、もうちょっとPRの仕方を変えた方が良いんじゃないかな?っていうのは思っています。

板橋(夫)さん いまは2、3ヶ月に1回、土日の休みと有給、あとテレワークを上手く活用して長期間滞在できています。そこでやっているのが、朝早くに子どもと一緒に近くの湖へ行って、魚を釣ったりエビをすくったり、夏だったらクワガタ採って。で、2時間くらい遊んだら帰ってきてテレワークみたいな感じで、すごく楽しませてもらっています。なので、要望っていうのはないですけれど、「この良さがずっと続いていって貰えれば良いな」って。本当にそっち行くと人間らしく生活できるというか、すべて遊びに変えられるので楽しんでいます。

髙橋さん 私は先ほど今野さんがお話しされた様な「学校や習い事の情報」を、移住してくる方の年齢層に合わせてちょっとまとめていただいて、年代別に「大体こういうものがあるんですよ」って形にしていただけると良いかなって。例えば、放課後の習い事系のものが学校から後から後からくるんですね。でも曜日って決まっているじゃないですか、どれを入れて良いのか全貌がわからないので。

あと、私は雪かきの経験はほとんどないので、移住をして来る人に対して「雪かきレクチャー」を…教室でもなんでも良いんですけれど、とにかく田舎に暮らしたことがないっていうことは、当たり前のことが当たり前ではなくて、やっぱり不安なんですよね。「こんな感じにやってるんですよ」ってことを教えていただけたら良いかな、と思いました。

板橋さん この時期、冬支度をもう結構ばたばたとしなきゃいけないと思うんですよね。なので「冬に備えての年間スケジュール」みたいな、「この時期にはこれを買いましょう」とか「ここ良いよ」とか。あと、それこそ「子どものスキー教室」はいつどこに連絡したら良いのかとか費用概算とか。わかっていた方が計画を立てやすいんですよね。やっぱり2拠点はお金がかかっちゃうので、予算を組み立てやすくした方が余計な不安がないっていうか、計画的にできるのかなっていうのは思いました。

東川町おすすめ04

東川町が提案する親子の過ごし方 ─ ひがしかわ写真少年団 ─
その他にも、スクールバンド(東川小学校)、ヒップホップダンス教室、ピアノ教室、英会話教室、書道教室などなど、町内の子ども向け文化芸術活動もたくさん。

さてここからはご参加いただいた方からのご質問に答えていきます。

「逆単身赴任は、いま全国各地でそういった移住を検討されている方がいらっしゃるんじゃないかと思うんですよね。今回のイベントは、必ず東川に移住していただきたくて開催したわけではなくて、その方々がどういったことが壁になっているか。そういったことに対して、ここに実践されている方がいらっしゃいますので、体験談を伺う機会を設けられたら良いなと思って企画しました。聞いてみたいことがあれば遠慮無く言っていただけるとありがたいなと思います。」(吉原課長)

そんな吉原課長の思いの通り、質問内容も「特別支援教育など小学校に関すること」「家計負担を減らす工夫」「町からの補助」などリアルな内容が続きました。

いかがでしたか? 決してすべての人に当てはまる暮らし方ではないかもしれませんが、このイベントを通して「自分らしい暮らしのかたち」に思いを巡らせた方も多いと思います。

新しい人生のあり方。そのきっかけはこんなところにあるのかも知れません。

シネマ活まち映写室より

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