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【イベントレポート】山梨県都留市「地方でもIT企業を起こせる!Uターン起業家が語るローカルビジネスとの向き合い方」

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2023.6.6

IT企業と聞いてどんなことをイメージしますか?

革新的で創造的な仕事。
カジュアルでおしゃれな雰囲気のオフィス・・・

都会的な印象が強いIT企業を山梨県都留市で立ち上げ、地域と共に着々と成長させている起業家がいます。
今回その起業家 である「C-Table株式会社」代表、田邉さんに、起業に至った経緯、IT企業としてどう地方で活躍しているのか、また、地域 DXの本当の課題はなにか、そしてこれから会社や地域をどのように発展させていくのか、をオンラインイベントで語って頂きました。
これからDXで地方にどんな明るい未来が創造できるのでしょうか。

先ず都留市はどんなところか都留市企画課森嶋さんより説明して頂きました。

 

クリエイティビティを高められる町:都留市 

都留市の大きな利点は東京都新宿から車でたった1時間半で到着するというその利便性。また市内どこからでも30分走らせると富士山麓についてしまうという自然の豊かさ。
そして約3万人の町の人口の約10%強が10代~20代の若い世代であるというその活気。学生時代から民泊やカフェなどを起業する人も次々現れています。

 

またその都留市の魅力を再認識し、Uターンして起業する人も増えています。
荒れ野原だった所に素敵なドームハウスのあるグランピング施設を建てた奥秋さん。コワーキング施設を運営し、子育て支援を行っている奈良さん。
今回お話し頂いたIT企業を立ち上げ、地域行政や企業をサポートしている田邉さん。

 

 

都留市がおもしろいと思い移住し起業した人もいます。
地域電力会社を立ち上げた鹿島さん。都留文科大学を卒業し、そのままカフェのオーナーになった黒澤さん。都留の森が好きになって山の中のキャンプ場を購入し、カヌー工房とコテージを運営する山田さん。

 

都留市に戻っても、外部から来てもいろいろな活動ができる、クリエイティビティを高められる場所、それが都留市です。

 

次にそんな魅力的な町、都留市で実際に起業し活動しているIT企業「C-Table株式会社」代表の田邉さんに、Uターンして起業した経緯、地域で5年事業を行った今、思っていることをお話し頂きました。

Uターンして起業した経緯

高校を卒業し、進学と共に都留を離れ、そのまま東京都内で就職、結婚、子供もできました。都内でマンションを買おうかなと探しているうちに、田舎に帰って自然の中で子供を育てるのもいいかなと思うようになり、Uターンすることにしました。最初から地方で起業しようと思っていたわけでは全くなく「子育てを自然の中でしたいなあ」というのが一番のUターンした理由でした。

従って最初は2時間弱の時間をかけ都内に通っていましたが、その勤務を5日から3日に減らし、雇用形態を業務委託に変え、徐々に生活の拠点を山梨に移し、そして5年前の2017年に都留市にてIT企業「C-Table株式会社」を設立しました。

 

現在の事業内容 都内の会社の業務委託から地域のシステム開発へ

「C-Table株式会社」は、業務委託の方も含め従業員十数名で活動している会社で、その多くが2拠点だったり、移住したりして仕事をしています。元々は都内の会社から業務委託を受けた仕事が殆どでしたが、縁あって都留市役所のシステムの提案をする機会を得て、今一緒に仕事をしています。直近では市役所の来庁予約、体育館などの施設予約をスマートフォンでするシステムを構築運用しています。
市の仕事を受注したことから、地元の製造業の方からも相談を受けるようになりました。都留市には従業員30名程度の製造業の会社が多く、その2代目、3代目が会社を引き継ぎ事業を行っています。これからの成長のためにはデジタル化が必須だと現状に問題意識を持っている方が多く、今使用している業務管理システムをクラウドに移行する伴走支援を行う仕事が増えています。地元でIT系の仕事があるとは全く思っていませんでしたが、自分のスキルが生かせ役に立てることがあると思い、これからもっと地域の仕事を増やしたいと思っています。

 

地域DX「本当の」課題:デジタル投資をどう有効活用するのか

日本ではピークの1995年から2060年には約4300万人の労働人口が減少予定で、これはフランス一国の労働人口に当たります。
山梨県も現在、2010年から30年で労働人口が10人から6人になる予測、都留市の人口も3万人から2万人に減少する予測です。

 

 

「予測」と言われますが、これから出生率をどれだけ上げたとしても1歳の子供は増えないので、これは「確定」された未来です。
労働人口が急激に減少する、この「確定」された未来において成長するためには、今10人でしている仕事を5人でする必要があります。できないなら売り上げ利益は半分になり、しかし、できれば生産性は2倍になります。
この問題解決の鍵は「DX(デジタル)」にあると思います。
例えば、地方の製造業においては、人が足りない、採用できないという顕在的な課題があり、有効求人倍率が6~7倍になっている所もあると聞きます。足りない人材を埋めるためにもデジタル化は重要になってきます。

DXの大切さは広く認識されており、今後10年間でデジタル投資は約4倍に増加すると見込まれています。「デジタル投資をどのように使うのか」これが今重要な課題です。

設備、原材料が必要な製造業とは違い、デジタル投資は、人への投資、人材投資になりますが、地方の課題は投資を引き受けるデジタル人材がいないところにあります。地元、内部にデジタル人材がいないため、外部にDXを丸投げしてしまうと、変化の激しいこの時代にシステムが現状と合わなくなっても自分たちで再構築できず、投資が無駄になるということの繰り返しとなります。

 

 

課題への解決策:現場でのDX人材育成

「C-Table株式会社」では、自分たちが企業の未来に向けたDX投資を引き受けた場合、ただシステムを作るだけでなくその企業の10年後の成長に必ず貢献する、そのための人を育てる、企業に対してもそのような啓発活動をしていく、これをミッションに事業を行っています。
その為、都留市と協力し地域DX人材を育てるためのスクール「地域DXスクール」を2023年より創設予定です。
地域に必要なDX人材とは、原理原則がわかっており、潜在的な課題を主体的に見つけ、その解決策を実行に移せる人材です。
従って「地域DXスクール」では、ただプログラミングを学ぶというよりは、DXが求められている場所での潜在的な課題をどのように抽出するのか、どう解決していくのか、実践を通じて具体的に学んでいきます。そして、課題の解決策を、運用を任されている都留市の公式LINEや観光協会さんのシステムを使って実装し結果を検証するという取り組みをしていきたいと思っています。またその実装した結果を公開し、そのデータを基にアイデアを募るというオープンな取り組みもしていきたいと思っています。このような取り組みに協賛していただける企業から企業ふるさと納税をしていただき、それを原資にしてこの取り組み拡大していきたいと考えています。

 

 

最後に参加者からの質問に田邉さんが答えます。

Q. 都留市での起業を決定づけた出来事などありましたか?地方で起業する利点は?
A. 都留市に住みたかったことが最初ではありますが、市役所から声がかかって地域でも自分のスキルが生かせるのではないかと思ったことがきっかけです。
地方ではお客様との距離が近いこと。また行政の仕事では自分も一ユーザーであるためモチベーションも上がります。

 

Q. 地域DXスクールは会社内部の人向けなのでしょうか、外部のコンサル的な人向けなのでしょうか?
A. 内部から理解する人、外部からサポートしたい人、また大学生、一般の方、いろいろな方に参加してもらいたいと思っています。

 

Q. IT知識が少ない人に対して丸投げ開発にならない工夫をしている所はありますか?
A. いろいろ悩みながらですが、今は2週間に1度は会いに行き、60点くらいのものを見せてお互いに改善策を検討しながら理解を深めていくことをしています。
またシステムを作っても、使ってくれないことがあるので、導入前にワークショップを行ったりもします。現在の業務の課題の洗い出しや会社のどのようなところが好きで、どう成長していきたいと思うか考えてもらい、その為にはデジタル化が必要であると自ずと理解してもらっています。デジタル化という変化に前向きに取り組めるよう気づきを促しています。

 

Q. 行政との仕事で気をつけていること、大事なことは?
A. DXにかける投資を受け、見合うだけの価値を生み出しているか、それを地域還元できているか、いつも自分に問うています。システムを納品するだけではなく、人を育てる、しっかり使えるようにしていくことを大事にしています。
例えば都留市体育館の予約システムのように、ただ早く予約した人が予約できるのではなく、予約したいグループ同士がお互いに交渉しながら予約が確定するといったような、元々デジタル化する前からあった人間らしい方法は残し、利便性は上げるというのを大切にしています。

 

地方で起業し、地域に深く入り込み、そして地域の将来を熟考した結果からDXスクールを創設。どのような内容になるのか、どのような結果をもたらすのか、そして都留市がどのように発展していくのか、非常に楽しみです。漠然とした暗い未来ではなく明るい未来が期待できる、やる気がでてくる、エネルギーに満ちたオンラインセミナーでした。

 

活まち鍼灸師M