ロード中...
トップ画像

豊前のコミュニティバスでまちを巡ったら、
人の優しさで心がパンパンになってしまったお話。

たのしむ   親しむ   すごす   やわらぐ  
2023.1.20

豊前市2度目の訪問。
今回は、求菩提山トレッキングをメインにして、もう一日は豊前のまちを散策する予定を立てていた。
最初の旅では、自転車にて豊前の里山を満喫したので今回は前とは違うアプローチで豊前のまちを散策する、と決めていた。
散策する手段と方法が違えば、同じまちでも捉えられる景色も違ってくるからだ。

ただ、豊前のまち、海から山まで兼ね備えていて、「歩く」にはもちろん広すぎる。
というわけで、旅行の出発前に公共の交通について調べてみた。結果、「豊前市バス」という市運営のコミュニティバスがあることが分かった。市内に4つの路線が通っており、まち歩きの心強い味方となりそうな存在である。
私以外の、誰かの旅の参考になれば・・・と願いつつ、私が体験したコミュニティバスで巡る豊前の旅について綴ってみたい。

 

お昼頃、豊前のまちに到着して海の方を散策した後、初めて乗車するコミュニティバス。今日は轟(とどろ)線に乗り、気になるお店を覗きに行こうと思ったのだ。
降車するバス停名は「久路土」。きゅう・ろ・つち、と読む。面白い!
このバス停からほど近い、「STAMP Furniture」を訪れることが目的。カフェが併設された家具&雑貨を扱うお店なのだが、かつての郵便局をリノベーションしたということでお店の存在自体が見てみたかった。

バス停に立っているとほぼ時刻どおりにバスが姿を現わした。大きめのバン、という仕様。ちなみに、翌日乗車したのは「くぼてん」くんが描かれていてカラフルなバスだったから、色んなタイプの車両が存在するようだ。

【画像:豊前市ホームページより】

ちょっとドキドキしながら乗車。運賃支払いのルール、先払いと後払い、どちらもあるので乗車すぐ、運転手の方にお聞きする。
運転手さん、「あぁ、降りるときでいいですよーー」と答えてくださる。まちの人と言葉を交わすとちょっと緊張が緩む。
座席の一番後ろに座り、目的とする降車地点を間違わないよう、注意を窓の外と車内アナウンスに集中することに。

前回のサイクリング旅では訪れなかった地域を走っていく。初めて見るまちなみをバスの中から眺めると、自ずとテンションが上がってくる。

バスに揺られつつもしばらく経ったとき、ふと気づいた。
あれ・・・・?どうやら降車地点を過ぎたらしい・・・・?
ある地点から流れる景色が、いかにも”山に向かっている!”という景色に変わったのが分かった。

(ど、どうしよう・・・・こんなに走ったら歩いて戻るのは難しい距離だろうなぁ・・・)

焦りつつも頭の中で色々と考えていたとき、私の様子が一気に挙動不審になったからか、ここで運転手の方が

「どちらまで行かれるんですかぁ?」と声を掛けてくださった。
「あ、キュウロツチ、というところで・・・・」
「あれぇーーーーー。過ぎましたねぇーーーー。今ここで降りても、大分戻らないといけないですねぇーーー。」

(そ、そうですよね・・・・・・)

「どうします?」

旅のこういうハプニング、実は個人的に嫌いでは、ない。
私の目的の一番は、”まちの景色を知ること”なので、ここで予定を変更することに。

「・・・じゃあ、このまま山の方まで乗せてくださいー。特に予定もないのでー」と答えると、
「そうですか?じゃあ、このまま走らせますねーーー」

山に向かいながら緩やかに登るように走っていくと、右手前方に神社が見える。その向かいには川にかかった橋が見え、公園のようになっている。

綺麗なところだな。
せっかくだから、とここで降ろしていただき、そのあたりを散策することにした。
バスの運転手さんはとても優しく、
「上に上がったら(折り返し運転で)また降りてくるので、またそれに乗ったらいいですよーーー」と言ってくださった。
有難いな。一人旅なのに、独りじゃないと思えてくる。

少し脇にそれるように歩いて行くと、川に降りるような階段と綺麗に整備された場所が見える。近づいてみると「轟フジ農村公園」という看板があった。
きっと、藤の季節になるとさらに美しい景色が見られるのだろう。ちなみに、「轟の藤」というのは市の指定天然記念物だそう。

この日はとても良いお天気で、空はどこまでも拡がるような奥行きが感じられた。まさに青い空。そして、その「青」の加減がとても美しくて。

思わず、カメラを頭の真上に上げ、空に向かい何度も何度もシャッターを切る。
でもあまりに光がまぶしくて、上手くカメラに収められているのかまったく確認もできない。それでもとにかく、この感動を収めたくてパシャパシャパシャ・・・・と、無我夢中になっていた。
周りに人がいなくて良かった。多分、ちょっと風変わりな姿に映ったはず。

そんな、夢中な時間を過ごしていると公園を少し下った道路の先の方で、先程のコミュニティバスが停まってくれた。
思わず走り寄って、乗車する。
今度は折り返すようにJR宇島駅に向かうことになり、バスの旅「後編」というわけである。

私が着席したのを確認後、運転手さんは私が夢中になって写真を撮っていたことを受けてか(つまり、運転手さんには風変わりな様子、見られていた?!)、
「さっき写真を撮っていた場所、いいですよねーーー!自分も、この風景が好きでこの仕事やっているようなもんですよーーーー」
と、爽やかに話してくださる。
こんなにも美しい景色を見ながらお仕事できるって最高だし、それが働くモチベーションって、それ以上に素敵なことだと思う。

本当にすごく綺麗です!と答えると、
「先日も、テレビが撮影に来ていたようですよ」とのこと。
わぁーーー!バス乗り過ごしたお蔭で、豊前の素敵な場所をさらに知ることができたわけだ。それってある意味ラッキーだ。

さらにラッキーなことは続く。道中、運転手さんがまるでガイドさんのように、まちのことを教えてくださる。

「あーーー、今日は霞んでいて見えないけれど晴れた日はこの場所から山口県が正面に見えるんですよーーー」
えー?!あ、そうか!!山口県、海を隔てて向かいになるんですね!
「そうなんです、近いんですよねーー!豊前の言葉も、北九州よりもどちからといえば山口の方に近いんですよね。」
そ、そうなんですね?!知らなかったー!

途中、鬼の木、という地名を通過したときも、
鬼の木、って面白い地名ですね!と、私が話したのを受けて、
「そういう木があるんですよ!」
え?!あるんですか?
「そうそう、ちょっと不思議な形をしてて面白いんですよーーー」とか。普通に旅していたら、もらえなかった知識と時間。楽しい!

当初、行きのバスで私が降りて訪ねようと思っていた、久路土の交差点にあるお店(STAMP Furniture)の前を通るときも
「あ!ここですよーーーー最初の目的地だったところ。ほんの数日前にテレビで紹介されていたから、お客さんもそれで来られたのかと思ったんですよーーー」と教えてくださった。
そのお蔭で、お店の外観を確認できた。

STAMP Furniture。
白のレトロな建物はとても可愛くて魅力的だった。パッと見た印象では、台湾にあるオシャレなカフェか雑貨屋さんのよう。絶対に私好みだ。
次回は必ず、お店の中も探検したい。次回の旅の宿題だ。

 

そろそろ、終点のJR宇島駅に近づいてきたとき
「駅に着いたら、どうされるんですか?」
と、降車後のことまで気にして聞いてくださる。

道の駅豊前おこしかけに行きたいんです、と私が答えると、コミュニティバスの路線ごとの時刻表を次々に広げ、あれこれ調べてくれた後、
宇島駅で降車したその同じバス停に畑(はた)線のバスが来るから、それに乗って、○○というバス停で降ろしてもらったら、道の駅おこしかけ近くに行けるから
と、とても細かくそして丁寧に教えてくださる。どこまでも優しい運転手さん・・・・。
こんなふうに、まちの人の生活や、私のような旅行者のみなさんのまちあるきのサポートを担ってくださっているのだろうなぁ。有難いなぁ。嬉しいなぁ。

駅に到着してバスを降りるとき、「ありがとうございました!楽しかったです!」
精一杯お礼の気持ちを伝えながら(また豊前を訪れたときには、また必ずバス、乗ります!!)なんて思ったりしていた。ずいぶん気が早いのだが。

その後、運転手さんに教わった畑線のバスを待っていたのだが、教えていただいたはずの降りるバス停の名前を忘れてしまった私。
バス停が書かれた路線図を見ながら、道の駅近くのバス停「広山」と「船入」のどちらかだったかな、と目星はつけてみるのだが・・・・・。

どうしたものか、次に来るバスの運転手さんに聞いたらいいかな? などと考えていたら、同じバスに乗られるであろうまちの方がバス停に来られた・・・!
豊前のまちの人は優しい、ということを今日一日で何度も体験済みの私。迷わず、この方に声を掛けさせていただくことに。

「あの、これから来るバスで道の駅おこしかけに行きたいんですが、その場合、降りるバス停は、広山が良いですか?」とお聞きしたところ、
「いや、広山じゃなくて、船入の方が近いですよ。船入だとちょっと来た道を戻るかたちになるんだけども」とこれまた丁寧に教えてくださる。
有難いなー。とまた感動。バスに乗車した後もそこのことを思い出すだけで嬉しくなってくる。まちの人の優しさに胸がいっぱいになってしまった。

そして、無事教えていただいた船入のバス停で降りるとき。私が降りるバス停を聞いたこと覚えていらして、こちらがちゃんと降車するか気にしてくださっていた。
「有難うございました!」
お礼を伝えて私がバスから降りても、バスの扉が閉まるまでこちらを向いて会釈をして見送ってくださった・・・。や、優しい。見守ってくださる気持ちが、じぃんと来るほどに嬉しい。

その後、教えていただいたように、バスで走ってきた道を少し戻るかたちで無事に道の駅にたどり着けた。
豊前のまちの人たちの優しさリレーでたどり着かせていただいた感じ満載で(笑)なんだかもう大満足。豊前の特産品たちを前にしても、買い物欲より旅行の満足度がパンパンになって、心の満腹感がすごい。

それでもやっぱり夜にはおなかがすくはず、、、、と購入したのが「よかろうオリジナル 周防巻(鯖寿司)」。
オリジナルというのに惹かれるし、外装からして美味しそうだ。

その日の滞在先であるホテルにていただいたのだが、予想どおり、いや予想以上に大ヒット。
豊前特産の柚子を使ったという、鯖寿司。大根にほんのり香る柚子の塩梅がちょうど良くてあっという間に平らげてしまった。大満足、「おかわり!」と言いたくなるほどに。
次の旅でも絶対に食べたい。

豊前のまちの人の優しさとまちへの愛情。そしてまちの美味しいもの、すべてに感動して終えた一日。
もしも、豊前のまちをバスで巡りたい、と考えている方がいらしたら自信を持っておすすめしたい。きっと私のように、豊前のまちの人の優しさに触れる時間になるだろう。
ひとつ気をつける点があるとすれば、路線と時間帯によっては運行の間隔が開いているものもあるので、あらかじめ路線と時刻をチェックしてまちあるきの順序を決めておいた方が良いかもしれない。その点は電車とはちょっと違ってくると思う。

前回の自転車でのまちあるきとは全然違う面白さが展開した一日。前のサイクリング旅もとても楽しかったが、今回はさらに豊前のまちのこと、豊前の人のことが知れた気がして嬉しい時間が過ごせた。

また必ず訪れたくなる、おかわり希望、の旅。ご馳走様でした!

活まち出身の旅人W

【参考ページ】
豊前市ホームページ 豊前市バスご利用案内 https://www.city.buzen.lg.jp/koutuu/bus/25kaisei/25kaisei.html