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豊前の山の新しい観光拠点
「求菩提茶屋」からひもとく里山再生のヒストリー【前編】

たのしむ   やわらぐ   すごす  
2024.1.26

 

福岡県豊前市のシンボルである求菩提山(くぼてさん)。
春にはシャクナゲ、夏は川遊び、春と秋には登山客で賑わう場所に、2023年11月「求菩提茶屋」がオープンしました。

豊前市の清流「岩岳川(いわたけがわ)」のほとりに建つその建物は、以前はヤマメなどの川魚料理の店が営業していましたが閉店し、長らく無人の状態が続いていました。
その場所が、2023年になって再生を遂げ、本格的に営業を再開することとなったのでした。

生まれ変わった求菩提茶屋は、求菩提山の麓から連なる里山エリアを中心に、豊前市の新たな観光案内所兼喫茶としての役割を持ち、豊前の自然やアクティビティを楽しむ起点となるでしょう。
オープン当初から テレビ取材も受け、順調なスタートを切った様子の求菩提茶屋へ、足を運んでみました。

求菩提茶屋へ

市街地側から求菩提山の麓にある求菩提茶屋へと、県道32号線をひた走ります。

 

遠くからだと山頂部しか見えない山も、鳥井畑まで来たら特徴である円錐形の形を見せてくれます。
ここまで来れば、あとわずか。

カラス天狗の人形が目印、求菩提公共駐車場が利用できる。バス停もあり
無料で利用できる求菩提公共駐車場からすぐそば 、木と木の間の建物が求菩提茶屋
茶屋の中にはペレットストーブ
囲炉裏を囲んだテーブル

求菩提茶屋は通常、金・土・日の週末営業(祝日営業もあり)。

「求菩提茶屋は二階と一階があって、喫茶スペースはここの二階、一階はハンモックが置かれて、今後テントサウナイベント等も行う予定です。」と教えていただきました。
茶屋を再生し、訪れる観光客や登山客をもてなしているのは「一般社団法人豊前観光まちづくり協会」に所属するメンバーです。

写真左から一般社団法人豊前観光まちづくり協会の石坂さん、東さん。豊前市地域おこし協力隊の平野さん

 

石坂さんは2014年に東京から豊前市に移住してカフェをオープンさせるほか、当時このエリアでは珍しかった女性の活躍支援を目的にNPO法人を立ち上げられたそうです。
観光協会には2022年に参加。

東さんはコンサート会社や放送局での広報などを経て、2015年春に豊前市の地域おこし協力隊第一期生として着任。
前職で豊前市を取材した折、自然・文化・神楽や里山の人の魅力に惹かれて、地域おこし協力隊に応募したそうです。
観光協会には地域おこし協力隊の任期満了後に参加されました。

平野さんは2023年9月に北九州市から移住して地域おこし協力隊に着任したばかりの方。
いつかジビエを活用したドッグフードの開発や、先々ではドッグカフェがしたいとのこと。前職は医療関係。

「せっかく山の方まで来てくれたのだから、色々食べてみてください!」と、豊前ならではの素材を使ったお料理やスイーツ、飲み物を運んで来てくれました。

地域の方の手作りゆず胡椒とお漬物が添えられた「求菩提そば団子汁と鶏めしおむすびセット」
聖なる求菩提山の禊ぎ水を味わえる水菓子。豊前茶シロップときな粉でいただく「求菩提のしずく 」
つぶ餡たっぷりのぜんざいに豊前・岩屋の里で育った求菩提そばのお団子「求菩提そば団子入りぜんざい」
珈琲にも合うと人気。モチモチのお団子とサクサクのそばの実の食感が楽しめる「求菩提そば団子」
豊前・才尾の茶畑で育った豊前茶。そばスイーツと好相性「フレンチプレス豊前茶」
全10種類のメニュー

 

2022年秋から地域おこし協力隊が7名増員

まちづくりの有志たちで茶屋のリノベーションを始めたのが、2023年の夏。
秋の登山シーズンにオープンさせるまでの期間は約3ヶ月。決して長くなかったと思います。
これほどたくさん豊前ならではのメニューを考えたり、放置されていた建物をここまで再生していくのは大変だったのではないかと思いました。

それを伝えると東さんは
「人材がちょうど今年揃ったことや、今までやってきたことが不思議なほどにつながったことで、これまでやりたくてもできなかった里山の拠点づくりが実現できました」と話してくれました。

「人材がちょうど今年揃った」と東さんが仰った理由を詳しくお聞きしました。
それは豊前市の地域おこし協力隊が、2022年の秋から今まで7名増員されたことや、観光協会にも、民間で観光の仕事をしていたスペシャリストが入ったことのようでした。

大きな市ならともかく、人口24,000人の豊前市で地域おこし協力隊が1年に7名増員とは驚きです。

「徐々にという感じではありましたが、特に2022年ごろから流れを感じました。
それまで実際に動ける人員は少なかったし、どれだけ豊前の観光をPRするためのアイデアがあっても『やりたくてもできない』状況がずっと続いていたのに」

それが地域おこし協力隊の増員から、観光を活性化するための人材を協会に増やせたこと、そしてメンバー各々のスキルが噛み合ったことが大きかったようです。

 

そば団子を協会メンバーで試食

茶屋のスタートひとつとっても、地域おこし協力隊になったばかりの平野さんが移住前に食品衛生責任者の資格を取得しており、石坂さんはカフェ運営経験者。

それで速やかにオープンまでこぎ着けられたのだと。

「みんな得意なことが違って、前職の経験も違います。
『これは自分ができますよ』と言って、今まで私がするしかなかったことを他のメンバーが担ってくれました。そのおかげで、私も自分がすべきことに力を注げるようになりました。
自分ひとりでは絶対にできなかったことです。」

特産品を活かしたメニューも今までの活動が活かされていた

「今提供しているメニューは、既にできていたものも多かったんです」とは石坂さん。
「例えばそば粉を使ったメニューについては、以前私と東さんも参加した『求菩提そば』のプロジェクトで、今回提供しているメニューの基本ができていました」

石坂さんと東さんの出会いは、石坂さんが2014年に東京から豊前市に移住し、カフェを開いた頃ぐらいからとのこと。東さんはその時まだ地域おこし協力隊ではなかったそうです。

「私が協力隊になる前の仕事で豊前のPRをしていた時だったと思います。豊前の神楽と里山の人たちの魅力にはまりこんで、北九州市から通っていましたね」と東さん。

石坂さんも
「このエリアでちょうどイベント活動していた地元の方の集まりに参加した時、東さんと自然と出会ったように思います。それから色々ご一緒しましたね。
後に発足した、森林セラピーのガイド『森の案内人』も互いに第一期生です。
私も東さんも里山と里山の人たちが好きで、自分たちが『これ素敵!』『ここでこれができたら楽しい!』と思ったことを発信したり、求菩提資料館のお茶の企画展と連携して里山のカフェ巡りを提案、イベントにしたりしていました。」

石坂さん・東さんが企画した、里山エリアのカフェの合同イベント(画像提供:東さん)
同じくふたりが関わった、求菩提資料館で行われた企画展(画像提供:東さん)

 

後編に続きます。

 

豊前のフォトライター ぶぜんノート

 

〈施設の情報〉

求菩提茶屋
所在地:〒828-0086 福岡県豊前市求菩提137-1
問合せ:0979-53-6660(豊前観光まちづくり協会)
Instagram:https://www.instagram.com/kubote_chaya/