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豊前の山の新しい観光拠点
「求菩提茶屋」からひもとく里山再生のヒストリー【後編】

たのしむ   やわらぐ   すごす  
2024.2.2

【前編】から続きます。

「海」から「山」につなげたかった

福岡県豊前市は海と山がある町です。

鱧やエビ、多種多様な魚介類、冬限定で「豊前海一粒かき」などが獲れる豊かな豊前海。
その豊前海に面した場所に、海のグルメを楽しむ観光拠点「うみてらす豊前」があり、観光客にもとても人気があります。

うみてらす豊前

そして山はと言えば、登山初心者でも楽しめる「求菩提山」や、本格的な登山が可能な「犬ヶ岳」があります。

求菩提山の国玉神社中宮手前の大鳥居
犬ヶ岳の苔

山のエリアは、春にはシャクナゲ、夏は川遊びなどが楽しめ、春と秋には県内外から登山客で賑わいます。

求菩提園地のシャクナゲ(高山植物)

観光客が来てくれる要素はたくさんあったものの、山の拠点はありませんでした。

「せっかく海も山もある土地なのに。ずっと勿体ないと思っていたんです」とは東さん。

東さんが第一期の地域おこし協力隊に着任して仕事についたのは第一希望の山のエリアではなく、第二希望の海のエリアだったそうです。
そこで「うみてらす豊前」の立ち上げを経験。
多くのお客様が市外からうみてらすにやって来てくれたと言います。

「うみてらすに沢山やって来る観光客の方々が、次に里山エリアに足を運んでもらえたらいいのにとずっと思っていました。
豊前にはせっかく海も山もあるのだから。
こうしたらいいのにというアイデアはあっても、その時は人も少なかったので実現が難しかったんです。
それがようやく繋がった感じです。
去年試しにと、川遊びの夏の時期に茶屋で餅や焼きそば、地域でとれたお野菜を売ってみたら、とても反応がよかったんですね。
市が出していたパンフレットを見てカフェや登山の案内所と思われて、『ここですか?』と訪ねてきた方もいました。
ニーズがあることは分かっていたので、それに応えたい気持ちでした」

飲食だけでなく、アクティビティの拠点としても

求菩提茶屋は喫茶だけではなく、豊前の自然やアクティビティを楽しむ拠点としても期待されています。
既に2023年にはサイクリングやテントサウナ、登山など、アクティビティのモニターイベントが開催されました。

求菩提山トレッキングのインバウンド向けモニターツアー(画像提供:豊前観光まちづくり協会)
里山サイクリングのモニターツアー(画像提供:豊前観光まちづくり協会)

各ツアーは、今年2024年の春から受け入れを始めようと、目下準備中のようです。
特にサイクリングやテントサウナのような若い世代向けのアクティビティは、新しい地域おこし協力隊の男性二人が担当とのこと。
そのうちのおひとりである末田さんは、東京の会社で働いていた時に仕事で豊前にやってきて、求菩提山のイベントに参加し、東さんなど観光協会のメンバーや自治体の人たちと関わりが生まれたそうです。

末田さんの前職時代に参加された菩提山のイベント。 真ん中でレジャーシートを広げているのが末田さん

その時の里山の心地よさ、豊前の人のやさしさに惹かれ、先々行いたいと考えていた農業の事業にも挑戦できたらと、豊前市の地域おこし協力隊に応募されました。

「登山経験はそれまでにもありましたが、求菩提山は人のあたたかさもあったのか、特別な体験でした。
この場所をもっとこんな風に伝えたらいい!と思ったことをどんどん実行させてもらっているし、自分も面白いと思って活動しています。
頑張りたいと言ったことは、『やってみたらいいよ』と周りが後押ししてくれる環境だというイメージは、移住前から後も変わっていません」

おわりに

オープンからテレビやWebメディア取材も入って、順調な滑り出しを見せている求菩提茶屋ですが、それは突然始まったことではなく、小さな積み重ねの結果でした。

小さな点と点がつながって、形になっていくまで大変な作業だったかと思いますが、東さんたちは「自分がしたかったことだから」「これいいよね、をもっと伝えたくなって」と自然にやってしまったことだと仰っていました。

そうさせてしまう豊前の魅力とは何でしょうか。
人口24,000人。海や山や川はあるけれど、特別な産業が見当たらない豊前市に、なぜ移住者が増えているのか?

以前、イタリア人の女性研究者Cecilia Luziさんが日本の地方移住を研究するため、ドイツのベルリン自由大学から来られ豊前市に滞在していたことがあります。
彼女が豊前に滞在中は、市内のあちこちを周り、求菩提山にも登りました。
一緒に過ごしている間、彼女はよく地域の方から
「ここは何もないでしょう。それなのによくそんな遠くからいらっしゃいましたね」と言われていました。

彼女はそれに対して
「豊前は何も無くはありません。こんなにあります!」と答えていました。

豊前市役所前。Cecilia Luziさん(左)とご家族
史跡ガイドボランティアの方の案内で求菩提山登山も体験。 背後は鬼が一夜で積んだと言われる850段の石段
帰国する前ZigZagへ。左からCecilia Luziさんとご家族、協会の東さん、吉田さん、石坂さん

「豊前に何があるのか」知りたくなった方は、ぜひいつか豊前や求菩提茶屋に来てその「何か」を、確かめてほしいと思います。

 

豊前のフォトライター ぶぜんノート

 

〈施設の情報〉

求菩提茶屋
所在地:〒828-0086 福岡県豊前市求菩提137-1
問合せ:0979-53-6660(豊前観光まちづくり協会)
Instagram:https://www.instagram.com/kubote_chaya/

 

★うみてらす豊前
所在地:〒828-0022 福岡県豊前市宇島76−31
問合せ:0979-82-2620(食堂)0979-64-6717(直売所)
HP:http://www.umiterrace-buzen.com/
X:https://twitter.com/umiterracebuzen
Instagram:https://www.instagram.com/umiterasu.buzen/

 

★Zig-Zag(ジグザグ)
所在地:〒828-0021 福岡県豊前市八屋2025−2
問合せ:0979-53-6660(一般社団法人豊前市観光まちづくり協会)
HP:https://zigzag-buzen.com/
Instagram:https://www.instagram.com/zigzag.buzen/