ロード中...
トップ画像

まちの歴史と奥深さを感じた、伊達氏発祥の地・高子岡城跡。

やわらぐ   すごす   親しむ  
2023.7.10

私は学生の頃から、歴史が苦手だった。人と年号とがまったく覚えられず、いつもテストでは苦労していた。その苦手意識を持ったまま大人になったので、未だに歴史物全般に対して疎いタイプである。
そんな私が、一本の活まちコラムを読んで、(歴史を知るって面白いかも)と思い、いつか訪れて見たいと思っていた場所がある。
福島県伊達市にある、高子岡城跡である。
そして、きっかけとなったコラムが「『鎌倉殿』では語られなかった、頼朝の血脈がここに。」である。

 

2度目の伊達市訪問の機会を得て、私は真っ先にこの高子岡城跡を思い出した。
今回の旅では、是非とも足を運びたい。
そう決めた。

 

阿武隈急行線高子駅のロータリーで地元のかたに道を尋ね、たどり着いた「高子岡城跡」の駐車場。

整備されている、高子岡城跡の駐車場。

駐車場脇にある高子岡城跡の説明書きには「伊達氏発祥の地」と記されている。
前述のコラムにも触れてあったが、常陸入道念西(ひたちにゅうどうねんさい)が奥州合戦の勝利で伊達郡を賜り、この高子岡に築城。そして姓を伊達と名乗ることとなり、伊達朝宗(ともむね)として後世に名を残している。ゆえに、ここから伊達氏の歴史が始まった、「伊達氏発祥の地」というわけである。
伊達氏はその後、時代の波とともに自らの場所を移さざるを得なかった歴史があるが、この一族発祥の地は、代々の伊達氏にとってもひときわ特別の場所であり続けたことであろう。

遠目からも際立つ存在感だった、入口に建つ白の鳥居。襟を正すような心持ちで静かにくぐり、果樹畑の間の小道をゆっくり登るように、丘に向かう。

小さいながらも、整えられた小道の階段。ほんのりした空気感が漂う。

階段を登った先に、お社が見えた。「亀岡八幡宮」とある。
この八幡宮も、初代朝宗が鎌倉の鶴岡八幡宮を勧請したとある。

 

今もなお、静謐さを含みその場にたたずむお社。
その姿は楚々として美しく、日頃より人々の手により大切に守られていることが伝わってくる。なんだか嬉しくてホッとする。

 

ほどなくして丘の頂上にたどり着く。
山頂標識にある、「高子二十境 丹露盤」という文字。ここは高子岡城跡、ではないのか?ふたつの名称が存在するのだろうか。

高子二十境、 たかこにじゅっきょう
丹露盤、たんろばん。

どちらも不思議な名称だし、丹露盤についてはそもそも日本語っぽくない。

その時はあまりよく判らずに、(そういう名前でも呼ぶものなのかなぁ?)と思ったが、
伊達のまちを眼下に見る景色の方に気が移り、名前のことはそれ以上深く追うことなく、丘を後にした。

 

伊達の旅から帰り、撮りためた画像たちを見返していて再度気になり始めた「高子二十境」と「丹露盤」の二つの名称。
これは調べなくては。

そもそも、高子二十境とは・・・?
江戸時代中期、この高子に住んでいた漢文学者・熊阪 覇陵(くまさか はりょう)が、村内の特に風光明媚な景勝地二十箇所を選び、
それぞれの地に名前を付けて、漢詩(五言絶句)を詠んだ名勝地のことを指すらしい。

漢詩にちなんでいるから、日本語とは違う、不思議な響きの名称なのか。
納得である。
私も訪れた「丹露盤」に始まり、他にも「高子陂(こうしひ)」、「拾翠崖(じゅうすいがい)」、「愚公谷(ぐこうこく)」などなど。
名勝地、というにふさわしい名前が並んでいる。
伊達の豊かさを改めて感じる。

旅の前準備不足であったため、私は丹露盤以外に訪れることは叶わなかったが、漢詩が詠まれてから300年近く経った現在もその二十の名勝地が残り、
高子駅の周辺にほぼ円形に散在しているのだとか。

眺望の良いコースが整備され、「高子二十境周遊ハイキングコース」というものも3コースほどあるらしい。
西コース、南コース、東コースとあり、それぞれ2時間で回れるようだ。
また、多くの来訪者に高子二十境の景観を楽しみながら歩いてもらえるように、と
地域の住民からなるボランティア団体が案内ガイドをしてくださるらしい(※団体が対象で、事前予約が必要)。

 

1189年築城とされる高子岡城。
その500年余りのちの江戸時代、城の跡地に立ち、故郷の美しい場所としてその地に新たな名をつけ、美しい詩を詠んだ学者。
そのまた300年近くのちの現在、故郷の美しい場所を愛し、多くの方に喜びを分けてくださる活動を続けるまちの人々。
この丘は、何百年もの長い歳月、様々なものや人や出来事たちを静かに見守ってきたのだろう。

私のような歴史が苦手な人でも、いつもほんのりと時の蓄積のようなものを感じながら旅することができる、このまち。
伊達、やはり魅力が大きな場所なのだ。

 

活まち書店・店員M

 

【参考サイト】

福島県伊達市観光情報ポータルサイトだてめがね 高子岡城跡

福島県伊達市ホームページ 高子二十境(たかこにじゅっきょう)

 

もっと伊達市のコラムを見る