福島県伊達市の人びとと環境、そしてお話に触れるたび、都市部に暮らす筆者には、ある想いが芽生えてきました。それは「伊達市は『色彩』のまちだ」というものです。今回は、伊達市にまつわる「色」のエピソードをはじめ、みなさんにも、心行くまで伊達の色を味わって頂ける、素敵な体験プログラムをご紹介していきたいと思います。
あんぽ柿を干す家々の軒先が、温かくも鮮やかな橙色に彩られる晩秋。冬枯れの景色に明かりを灯したようなこの光景は、不思議と懐かしさを呼び覚ます、伊達のまちの風物詩です。
まちを走り回って撮影した写真で、まちのPRに尽力される伊達市役所の橘内清隆さんからお話を伺った時(この時のコラムはこちら)にも、お気に入りの一枚として、色鮮やかなあんぽ柿の写真が上りました。
写真を通して、ふるさとの「色」をみんなに見せたい、とおっしゃっていた橘内さんはまた、早朝の霊山に日が射し、嶺全体が夕焼け色に染まっているお写真も、ベストショットだと語ってくれました。早朝に出逢ったこの霊山の色は、まちのみんなさえ知らないだろう、ぜひ見せたいと感じたそうです。
秋から冬だけでなく、緑の田畑が広がる平地と青空のコントラストが壮観なパノラマも、伊達市らしい風景のひとつです。市内を走る阿武隈急行の車体も、この2色を配したラインがトレードマークで、出身者には懐かしい色なのだと言います。
つい最近、そんな伊達市から、春の行楽シーズンをまちで過ごすお誘いがありました。桜並木の美しさや開催されるイベントの数々、そして、一押しアクティビティとして紹介されたのが、その名も「DATEZOME(だてぞめ)」です。まちの特産品である果物や、里山で採れた材料を使った染物体験だそうで、試しに、まちのみなさんが染めたTシャツやスカーフの色の鮮やかさを見て、思わずびっくりしてしまいました。
ブドウやモモの果実のほか、それらの木の枝も使って染め分けてみたものなのだとか。茶褐色にしか見えない木の枝も、育む果実の色彩を内に忍ばせているというのは、何とも不思議で趣深いものです。この木の枝は、どんな色を宿しているのかしら……と考えながら染めてみるのも素敵だな、と思い巡らせてしまいました。そして、作品を楽しげに差し出すまちのみなさんの笑顔を見て、思い浮かべたのもやはり、色のまち伊達というイメージでした。
実はこのお誘いというのは、2024年3月2日(土)に実施された、オンラインイベントのことです。「春の息吹とフルーツを使った草木染め体験。家族で楽しめるお出かけ情報をお伝え!」と題して開催されました。事前に申し込んだ参加者には、DATEZOMEキットのプレゼントもあり、伊達市でこつこつと集められた、木のチップがセットされていました。染め上がりは、やさしい桃色になるのだとか。
イベントの中では、笑顔あふれる二人のナビゲーター、伊達市に暮らす佐藤末実さんと菊田瑠香さんが、まちの魅力を紹介しながら、DATEZOME実演も見せて下さいました。きれいに染め上げるためのポイントや、色止め処理の有無による染め上がりの違いなど、お子さんから楽しめるシンプルな体験ながら、大人もはまってしまう奥深さや、何より試してみたいウズウズが止まらなくなる実演でした。あの果物やこの果物で染めることもできる? そうしたら何色になる? チャットでも色の話題が大盛り上がりでした。
このDATEZOME体験の拠点であり、普段お二人がお仕事されている場所が「U-プレイス伊達」。阿武隈急行線 高子駅目の前に位置する交流施設です。伊達市でしか体験できない数々のイベントの拠点にもなっており、菊田さんは、こちらで開催される「ハロハロマーケット」が大好きという、根っからの伊達っこ。ハロハロは、「ごちゃまぜ」という意味だそうで、広々とした敷地内で、マーケットやライブ演奏、ワークショップなどが賑やかに開催されるそうです。佐藤さんは、ハンドメイドのワークショップ「ちくちく茶話会」など、おだやかな時間を過ごす企画もされています。二人のお人柄に触れ、一緒にイベントやワークショップに参加できることも魅力的と感じた、そんな楽しい春のお誘いでした。
「色彩のまち伊達」を体感しに、また新しい色を探しに、伊達のまちを旅したい気持ちが、筆者の中でもむくむくと成長しています。まずは、DATEZOME体験。まちの空気に触れながら、すくすくと育った自然の材料で作る染めものは、きっと特別な宝物、そして体験になると思います。この春、伊達の色、思い出の色を、みなさんもぜひ見つけに出掛けてみてはいかがでしょうか。
※(ちょこっとご注意)果物で染める体験は、現地ならではのお楽しみ。限られた日程と回数で開催しているそうなので、情報のチェックはお忘れなく。
活まちの旅する記者 Tao
◆U-プレイス伊達(U-プレイス伊達:プレイスメイキングふくしま伊達) https://www.pm-fukushima-date.jp/
◆イベント開催情報や読みものはこちら! くらりだて https://kuraridate.com/