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街道・途中下車の旅。「富士みち」観光の注目スポット、都留市で富士講を感じよう 。(前編)

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2022.5.18

日本には、色んな道がある。
「武士道」「六道」などの道もあるが、今回は「東海道」「中山道」などの「街道」、それも山梨県を通る「富士みち」の楽しみ方を紹介していきたい。

「富士みち」は、生活道・物資輸送道・軍用道 などの意味も持ちつつも、伊勢参宮街道や金毘羅街道のような、「参拝客のための街道」という側面が強い。もちろん、信仰の対象は富士山だ。

富士山信仰は、江戸時代には「富士講」として隆盛した。江戸時代の長谷川角行が開祖といわれ、2ヶ月間に平均1~2万の人々が信仰を目的とした登拝が行われたようだ。富士山信仰自体は、富士山の噴火が起こっていた古代から存在し、やがて山岳信仰と密教・道教が習合し修験道の聖地となったが、その際に登山道が整備され、江戸時代に大衆の信仰対象として拡大した、という流れだ。

富士講により、江戸から多くの参拝客が押し寄せ、富士山の頂を目指した。五街道の一つ・甲州街道から大月宿(現在の大月市)で分岐し、谷村(同:都留市)を通って、吉田(同:富士吉田市)に向かうのが、「富士みち」のルート。

もしかしたら、現代の「富士みち観光」においては、富士山の麓のまちである、富士吉田のイメージが強い人も多いかもしれない。実際、「富士みち」とGoogle検索すると、富士吉田観光協会のホームページがトップに登場するし、その内容はSNS等で話題になった本町通りの紹介だ。

富士吉田の本町通り
富士吉田の本町通り

富士吉田には、最盛期には80軒を超える御師宿坊(おししゅくぼう)があり、富士講の人々に対して、祈り の作法のレクチャー、登山の案内、宿泊・食事の提供など、様々な世話をしたといわれる。富士山登山がなかなか難しい観光客でも、富士講の重要スポットである浅間神社の鳥居が街中にそびえたっているのも、人気の要因だ。

さて、実は私は前々から思っていたことがある。
日光街道の日光東照宮などもそうだが、街道観光は往々にして終着点ばかりが注目されがちで、途中の町にスポットライトが当たる機会が少なすぎるのではないか。
終着点を目指す道なので、ある程度は当然だとは思う。それでも、途中にも魅力的な町々がきっとあり、道を歩いた人々の歴史と息づかいが存在するのにな、と。

富士みちの中間地点の都留市は、江戸時代には徳川氏や豊臣系大名 の政治的拠点として活用され、郡内地方(南都留郡・北都留郡・富士吉田市・都留市・大月市)の中心地として栄えたそうだ。富士講を行った民衆の多くが、都留市で宿泊・食事等をした。

「ぶらり途中下車の旅」という番組があるが、
街道を途中下車して、終着点以外にも注目してみてるのも、いいかもしれない。

さて、2022年3月。公益社団法人やまなし観光推進機構が主催する「やまなし歴史の道ツーリズム」モデルコースに 、都留市からは2つのコースが設定された。『富士の麓の小さな城下町:谷村(やむら)コース』と、『富士山湧水の里:夏狩(なつがり)コース』だ。

それぞれの説明を見ると、「郡内織の江戸流通の拠点として栄えた“富士の麓の小さな城下町”、時折姿を見せる富士の姿からいよいよ山元にたどり着いたことを知る」「郡内織を支えた湧水の里、尽きることない湧水に身も心も清められる」と書いてある。
これらはもちろん「富士みち」とも重なるコースだ。

2013年6月に富士山が世界文化遺産に選ばれたのも、富士山の美しさが評価されたというよりは、日本人が富士山に宗教性・芸術性を見出した、その自然観や文化観が国際的に認められたからである。
葛飾北斎の『冨嶽三十六景』は、民衆の間に起こった「富士講ブーム」がきっかけで制作されたと言われており、富士みちは、単なる通り道でなく、文化が根付く世界的にも重要な道なのだ。
そんな富士道が通る、都留市。

都留市の富士道に、がぜん興味が湧いてきた。

それでは、前後編に分けて、都留市のスポットについて紹介していこう。
前編のテーマは、「富士山の見える景色」だ。
都留市は山間にあり、まちなかから富士山を臨むことはなかなかできないが、横道に逸れて高所に行けば、雄大な富士山を見ることができるのだ。

■高川山 (たかがわやま)
都留市の高川山から見た富士山
山梨県大月市と都留市の境にある標高976mの山。山頂からは富士山の展望が広がり、秀麗富嶽十二景にも選定されている。コースにもよるが2時間程度で頂上に到着することができ、初心者~中級者でも登山可能。山頂は360℃の展望が広がっており、近年人気が高い山だそうだ。

■九鬼山 (くきさん)
都留市の九鬼山から見た富士山
池の山コースの展望台からは、これぞ都留市、という景色を楽しむことができる。富士山に、リニア実験線、都留市の独特の地形・・・都留のまちを一望できるので、富士講の人々の歩みに想いを馳せるのもいいだろう。

■中央都留カントリー倶楽部
都留の山々の紹介から少し趣が異なるが、富士山の見える都留市内のゴルフ場を紹介しよう。中央都留カントリー倶楽部だ。多くの方が「富士山の見える場所でゴルフができて最高!」とコメントを残している。ゴルフ好きの方には、ぜひ行っていただきたいスポットだ。

ここまでの前編では都留市の「富士山の見える景色」について紹介した。後編では、「富士山の恵みと富士講の気配」をテーマに関するスポットについて、紹介していきたい。

後編へつづく

<参考ホームページ>
〇世界遺産富士山とことんガイド(https://www.fujisan223.com/
〇富士吉田市観光サイト(https://fujiyoshida.net/spot/410
〇やまなし歴史の道(https://rekishinomichi-yamanashi.jp/ja/
○都留市ホームページ 観光情報【登山・ハイキング】(https://www.city.tsuru.yamanashi.jp/soshiki/sangyo/shoko_t/5/index.html